あなたの子どもが欲しい夜 4つの愛と本能の物語
数日後の朝だった。

出社前に身支度を整えようとした私は、洗面所でふと手を止めた。

小さな違和感に気づいて、次の瞬間、胸の奥がすっと冷えていく。

――生理だ。

しばらく、私はその場に立ち尽くしていた。

鏡の中の自分は、いつもと変わらない顔をしている。

髪を整えて、スーツを着て、部長らしく一日を始める準備をしている女。

なのに、胸の中だけが静かに沈んでいった。

「……そうよね」

小さく呟く。

何を期待していたのだろう。

たった一度の夜で、そんな都合よく奇跡が起きるわけがない。

四十二歳にもなって、まるで若い娘みたいに夢を見ていた自分が滑稽に思えた。

それでも、どこかで願っていたのだ。
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