あなたの子どもが欲しい夜 4つの愛と本能の物語
出社してからも、気分は晴れなかった。

いつも通りにメールを確認して、部下の相談に乗って、会議で指示を出す。

声はちゃんと出ている。表情も崩れていない。

誰にも何も気づかれていないはずだ。

けれど心の奥では、朝からずっと同じ言葉が反芻していた。

奇跡なんて、起きない。

昼前、資料を取りに席を立ったところで、恒一と目が合った。

「部長、大丈夫ですか」

「何が?」

「少し顔色が悪い」

「気のせいよ」

「そうですか」

それだけの短いやり取りなのに、胸がまた苦しくなる。

優しく見つめられるほど、つらかった。

私は勝手に期待して、勝手に傷ついているだけなのに。

午後の会議中、下腹部の鈍い痛みがじわじわと広がっていく。
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