ゴースト・ロジック
恭介の涙がようやく止まった。恭介は息を吐き、ホットミルクを一口飲む。そしてポツリポツリと話した。

「俺、地元では東京行った時のことばっか話してただろ。「音楽で成功してやる」とかさ。でもこんなザマだ。夢も希望も消えた。……もう俺は幽霊みたいに生きて、働いて、ただ死んでいくだけなのかなって」

「まだあるよ。夢も希望もある。私はね、美澄くんのおかげで東京に行こうって思えたの」

夜々が恭介の手を握り締めた。

「私、お店を出そうって思った時にね、ある人に「東京とか都会に行った方がいい」って言われたの。地方じゃ人も少ないからって。怖かった。でも、東京で美澄くんが頑張ってるんだって思ったらさ、私も頑張ってみようって思えたんだよ」

恭介の頰を涙が伝う。それは、悲しさや苦しみから流したものではなかった。ただ、心に喜びが広がっていた。



「またここに来るよ」

カフェを出て恭介が夜々に言う。その顔はもう幽霊ではない。人に戻っていた。

「いつでも待ってるから」

夜々がニコリと笑う。恭介は歩き出した。

空を見上げれば、群青に染まっている。夜明けが近い。恭介は息を吐いた。

「まずは、転職するか」

退職願を何度破られてもいい。書き続ける。そう決意し、幽霊から人に戻った恭介は力強く歩き出した。
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