桐生家の四兄弟と私〜義兄弟に囲まれてます〜
電車に揺られて二十分ほど。

学校の最寄り駅に着いた。

改札を出ると、同じ方向へ歩く制服の生徒がたくさんいる。
転校初日で私服の私は、少しだけ居心地が悪い。
その横で、敦兄はあちこちから声をかけられていた。

「敦! おはよ〜」

「おお!」

「会長、おはようございます」

「おっす」

「え? 会長?」

思わず敦兄を見る。

「あー、俺、生徒会長なんだわ」

「えー!!」

「なんだよ、そんなにおかしいかよ」

「うん」

敦兄が眉をひそめる。

「……お前、たまにめちゃくちゃ正直だよな」

だって。

……あっちゃんは昔から、やんちゃなタイプだったのに。

そう思っているのが伝わったのか、敦兄が少し苦い顔をする。

「いやさ、担任に半分無理やり押しつけられて」

「え?」

「出席やばかったから。これやっとけって」

授業ほとんど寝てたし、と敦兄が悪びれもなく言う。

「あー、そういうこと」

想像がついて、なんとなく納得してしまう。

「でも、いつから生徒会に……」

言いかけたところで、
ふと、視界の端に動く影が入る。

振り向くと、
少し派手な女子生徒が歩いてきていた。

「敦、おはよう」

敦兄との距離が、妙に近い気がした。

その人は私に気づくと、ほんの少し目を細める。

一瞬だけ、探るような視線。

「……この子、誰?」

「俺の妹。昨日、海外から戻ってきたんだ」

敦兄がにやっと笑う。

「かわいいだろ〜」

「……そっか!」

妹というワードが出た瞬間、
さっきまでの空気が、ふっと緩む。

「うん。敦と似てなくてかわいい」

「なんだよ、それ」

「……」

兄弟と一緒にいると、昔からこういう扱いをされることがある。

少しだけ、複雑。


二人のやり取りをぼんやり見ていると、


――あれ?


ふと視線を感じた。

振り向くが、誰も見ていない。

……気のせいかな。

「どうした?」

敦兄が不思議そうに聞く。

「ううん! 何でもない」

私はそう言って、また前を向いた。

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