桐生家の四兄弟と私〜義兄弟に囲まれてます〜
廊下を歩きながら、きょろきょろと周りを見回す。

制服の中でひとり私服は、妙に浮く気がする。
なるべく人の少ない方へ向かった。

中庭に出たところで――

「あ」

家の鍵を忘れたことに気づいた。

さっき見た感じ、颯太はもう移動していた。
敦兄か俊兄に借りればいいかな。

三年の校舎を探そうと歩き出す。

校内の道を適当に進んでいたら、
気づけば体育館の横に出ていた。

見慣れた、背の高い黒髪が目に入る。

……ちょうどよかった。


「俊兄!」


誰かと歩いていた俊兄が、私の声に気づいて足を止めた。
  

「りあ!……あ、お前もう気分大丈夫か?」

私は小さくうなずいた。

「うん。……俊兄、ごめん。家の鍵ある?忘れちゃって」

「ああ。取ってくるから、ちょっと待ってろ」

俊兄はそう言って、さっとその場を離れた。

一緒にいた人に、何か一言声をかけている。

そこで私は、ようやくその人に目を向けた。

長い髪をひとつにまとめポニーテール。
すらっとした大人びた雰囲気の女子生徒。
……三年生、かな。

私の視線に気づいたのか、その人がやわらかく微笑む。

「あなた、俊くんの妹さんよね?」

「は、はい」

思わず背筋が伸びる。

「私、剣道部のマネージャーやってるの。俊くんとは部活が一緒で。よろしくね」

優しく言われて、少し安心する。

「あ、すみません。なんか話してたの邪魔しちゃったみたいで……」

「ううん、気にしないで。それより――」

その人が何か言いかけたところで、

「お待たせ」

俊兄が戻ってきた。

「はい」

そう言って、私に鍵を渡す。

受け取った鍵には、キーホルダーも何もついていない。

シンプルすぎる。
……俊兄らしい。

「ありがとう」

「今日、昌枝さん来る日だから。帰ったら会えるんじゃないか」

「あ、本当?」

久しぶりに昌枝さんに会えるのが嬉しい。

……それにしても。

家に昌枝さんがいるなら、鍵いらないんじゃ。

そう思いつつも、やっぱり俊兄らしいな、と少し笑う。

「じゃあ、またあとで」

「ああ」

俊兄と別れて歩き出す。


校門を出る、その時――

ふと、視線を感じた。

……まただ。

朝も、こんなふうに視線を感じた気がする。

振り返る。

でも、誰もいない。

「……気のせいか」

小さくつぶやいて、私は学校をあとにした。

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