桐生家の四兄弟と私〜義兄弟に囲まれてます〜
ルーフバルコニーに出ると、白いリクライニングチェアの上に、颯太の後ろ姿が見えた。

小さい頃みたいに、膝を抱えて体操座りをしている。

――あの頃より、ずっと大きな背中になっていた。

「颯太……」

名前を呼ぶと、颯太の肩がびくっと揺れ、慌てたように振り返る。

「っ……何で……」

かすれた声。

やっぱり――

泣いていたみたいだった。

ぬるい風が吹く。
昼は暖かいのに、夜の空気はまだ少し冷たい。

「颯太……」

私はそっと一歩、踏み出した。

「こっち来んな!」

思わず足が止まる。

「っなんで放っといてくれないんだよっ……」

言葉とは裏腹に、その声はどこか苦しそうだった。

私はゆっくり近づき、颯太の少し後ろで足を止めた。

横顔は、見えない。

肩が、小さく震えていた。


「……颯太、ごめんね?」


静かに口を開く。

「私、昔からおせっかいだし……。急に帰ってきて……颯太からしたら、鬱陶しかったよね?」

「っ違う……」

しぼり出すような声。

「違うんだよ……」

「え……?」

目を見開く。

「姉ちゃんさ……」

颯太は俯いたまま言った。

「帰ってきてからも、昔の俺のことしか見てないじゃん……」

「!!」

……否定できない。

何も、言えない。

「っなんだよ……」

颯太の声が、震える。

「急にいなくなったの、そっちのくせに……」

「っ颯太……」

「……なんで」

颯太の拳が、ぎゅっと握られる。

「え……?」

「なんであの時、俺を置いてったんだよ……」

振り向いた颯太の声が、夜の空気を裂いた。


「姉ちゃんの、バカヤロウ!!」


大きな目から、涙があふれ落ちた。
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