冷徹社長との出張一夜は溺愛の始まりでした
「由真? 聞いてる?」

「聞いてるよ」

ため息をついた。

「いつまでも仕事だけしてるわけにはいかないの。あなた、昔から一人で頑張りすぎるんだから。ちゃんと自分の幸せも考えなさい」

「……うん」

「一回会うだけでもいいじゃない」

仕方ないと、ありきたりな返事をする。

「考えておく」

「それ、断る人の言い方よ」

「お母さん」

「本気で言ってるの。由真、子ども好きでしょう」

 その一言に、胸がきゅっと締めつけられた。

「……そうだね」

「だったら、なおさらよ。先のことも考えないと」

「分かってる」

「きつく言うつもりはないの。ただ、心配なの」

「ありがとう」

電話を切ったあと、私はしばらくスマホを握ったまま動けなかった。
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