冷徹社長との出張一夜は溺愛の始まりでした
子どもが欲しい。家庭が欲しい。

その願いを、私はずっと見ないふりをしてきたのかもしれない。

だって、好きになった相手が悪かった。

一条圭太。社長で、遠くて、仕事しか見ていない人。

私がどれだけ想っても、向こうから返ってくるのは仕事の言葉だけ。

――君のおかげで俺は仕事ができる。

今日、圭太さんに言われた言葉を思い出す。

嬉しかった。泣きたくなるくらい嬉しかった。

でも同時に、そこには恋愛の“れ”の字もなかった。

必要なのは秘書の私。

一人の女としての朝倉由真じゃない。

「……分かってる」

誰に言うでもなく、私は呟いた。

「諦めるしか、ないよね」

ぽつりと零した言葉は、静かな部屋にあっけなく沈んだ。
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