冷徹社長との出張一夜は溺愛の始まりでした
三浦さんがそう言って立ち上がり、さりげなく私の歩幅に合わせてくれた。

庭へ続く廊下は木の香りがして、外には手入れの行き届いた小さな池と石灯籠が見える。

緑の中を歩くうちに、少しだけ肩の力が抜けた。

「緊張してますか?」

先に口を開いたのは三浦さんだった。

「……はい。かなり」

「よかった。俺だけじゃなくて」

「三浦さんも?」

「しますよ。こういうの、実は初めてなので」

意外で、私は思わず顔を上げた。

「お見合い、初めてなんですか?」

「ええ。仕事ばかりしてきたら、この年になってました」

「それは……ちょっと分かります」

「本当に?」

「私も気づいたら仕事ばかりで」

そう言うと、三浦さんはふっと笑った。
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