冷徹社長との出張一夜は溺愛の始まりでした
「なら問題ない」

いつもの簡潔な言い方。

でも今日は、そこに冷たさだけじゃないものが混じっている気がした。

前菜に手をつけながらも、私は落ち着かなかった。

目の前にいるのは、昼間まで容赦なく私を働かせていた社長だ。

なのに今は、わざわざこうして二人きりで食事をしている。

しかも――さっき、あんなことを言われたばかりだ。

「相手は?」

「おまえは、その男と結婚したいのか」

あの時の圭太さんの声を思い出すだけで、胸の奥がざわつく。

「食べないのか。手が止まっている」

「あ、すみません」

慌ててフォークを取り直すと、圭太さんが低く言った。

「謝るな。今は仕事じゃない」

その言葉に、息が詰まる。

「社長」

「今は圭太でいい」

聞き間違いかと思った。

「……え?」
< 36 / 108 >

この作品をシェア

pagetop