冷徹社長との出張一夜は溺愛の始まりでした
子どものことだって、結婚のことだって、勢いだけで決められる話じゃない。

三浦さんなら、きっと穏やかな家庭がある。

安心できる。迷わず将来を描ける。

それでも。

「……圭太さん」

気づけば、小さくその名を零していた。

「え?」

三浦さんが振り向く。

私は一気に顔が青ざめた。

「あ……ち、違うんです」

「今、誰かの名前を呼んだ?」

「すみません、あの……」

どうしよう。

取り繕おうとしても、うまく言葉が出てこない。

三浦さんはしばらく黙っていた。

責めるでもなく、ただ静かに私を見ている。

その沈黙の方が、よほど苦しかった。

「由真さん」

「……はい」

「その人のこと、好きなんだね」

否定できなかった。

ここで嘘をついたら、もっとひどい。
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