冷徹社長との出張一夜は溺愛の始まりでした
「……ごめんなさい」

それしか言えなくて、視界が滲む。

「謝らないで」

三浦さんの声は、驚くほど穏やかだった。

「そういう顔を見たら、分かるよ」

「本当に、ごめんなさい」

「まだ決めきれていないんでしょう」

「……はい」

「だったら、ちゃんと決めてから答えてほしい」

優しいのに、その言葉は鋭く胸に刺さる。

私はずっと、決断を先延ばしにしてきたのだ。

誰も傷つけたくなくて、自分も傷つきたくなくて。

「今日はここまでにしようか」

「三浦さん……」

「送るよ」

「いえ、一人で帰れます」

「そんな顔のまま帰せないよ」

立ち上がる三浦さんの背中を見ながら、私は膝の上で手を握りしめた。

もう逃げられない。

心が決まらないままでは、誰も幸せにできない。
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