冷徹社長との出張一夜は溺愛の始まりでした
「今さらか」

「今さらです」

「なら、慣れろ」

その言い方がいつも通りで、少しだけ可笑しくて。

こんな時なのに笑ってしまう。

圭太さんはそんな私を見て、ほんの少しだけ口元を緩めた。

「行くぞ」

「どこにですか」

「まずは送る」

「……はい」

その手を取った瞬間、不思議なくらい心が落ち着いた。

もう迷わなくていい。

優しい未来に背を向けるのは簡単じゃない。

三浦さんにちゃんと向き合わなければいけない。

傷つけることになるかもしれない。

それでも、私はもう知ってしまったのだ。

自分が本当に欲しかったのは、穏やかさだけじゃない。

この人に求められて、この人の隣で生きていく未来だと。

夜の冷たい空気の中、圭太さんの手だけが熱かった。

その温度に包まれながら、私はようやく、自分の本音から逃げるのをやめた。
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