クラスの透明人間は、夜を駆ける怪盗でした
第二話 守りたいもの
『怪盗ムーン様へ。
お願いです。助けてください──』
九月十八日、水曜日の放課後。図書室で見つけた手紙に、私の手が小さく震えた。
いつものように『星の王子さま』のページを開くと、小さく折りたたまれた便せんが挟まっていた。
私はそっと周りを見回す。
……よし。誰もいない。
便せんを開くと、そこには見覚えのある丸い字が並んでいた。
『怪盗ムーン様へ。
お願いです。助けてください。
新体操部一年の中村ひなのちゃんのリボンが、練習中の事故で壊れてしまいました。
床に置いてあったリボンを、三年の相馬先輩が誤って踏んでしまったんです。
先輩はひどく申し訳なさそうで、謝ろうとしているのですが、壊れたリボンをロッカーから出せないでいるみたいで……。
「新しいのを買ってあげる」と先輩から言われたそうですが、そのリボンはひなのちゃんにとって特別なんです。
彼女のお母さんは、昔、新体操の選手でした。そのお母さんが使っていたリボンを、ひなのちゃんに譲ってくれたそうです。
でも、お母さんはもう亡くなっています。同じものは、二度と手に入りません。
ひなのちゃんは「ボロボロでもいいから、お母さんのリボンで大会に出たい」と泣いています。
怪盗ムーン様。どうか、リボンを取り戻してあげてください。
──新体操部二年 春野凛』
「凛ちゃん……」