クラスの透明人間は、夜を駆ける怪盗でした

文化祭当日。十月下旬の土曜日。学校は、朝から賑やかだった。

校門には、保護者や卒業生たちが次々と入ってくる。各クラスの呼び込みの声が、廊下に響く。

「二年二組のお化け屋敷、めっちゃ怖いよ!」

「メイドカフェ、美味しいスイーツあります!」

校舎中が、活気に溢れている。

私は、クラスのお化け屋敷の受付を担当していた。

「いらっしゃいませ。二年二組のお化け屋敷へようこそ」

小学生の兄弟、お母さんと一緒に来た女の子、カップル。お客さんが次々とやってくる。

しばらく対応していたときだった。

「こんにちは」

聞き覚えのある声がして顔を上げると、翼くんが立っていた。

「お化け屋敷、入りたいんだけど。お客として」

「どうぞ」

「七瀬さんの作った仕掛け、楽しみにしてる」

「そんな大したものじゃないから」

「そんなことないよ」

翼くんがお化け屋敷に入っていく。少ししてから、大きな悲鳴が聞こえてきた。

「きゃあああ!」

お客さんたちが、楽しそうに叫んでいる。

私の作った仕掛けが、みんなを楽しませている。そう思うと、胸の奥がほっこりと温かくなった。
< 59 / 107 >

この作品をシェア

pagetop