午前零時になったら〜ピーターパンとシンデレラ〜
(結婚してフランスに行ったら、もう類くんとは永遠に会えなくなる……)

今すぐ「結婚しない」と叫び、屋敷を飛び出すことができたらどれほどいいだろうか。華純がスカートを握り締めていると、婚約者が華純の手にそっと触れた。思わず振り払ってしまいそうになるのを華純はグッと堪える。婚約者は言った。

「華純さん。不安かもしれませんが、僕と一緒に来てください。絶対に幸せにします」

華純はただ曖昧に笑うことしかできない。結婚を早め、フランスに行くことはもう決定事項である。

「来週、一緒に食事をする予定ですよね。その時に指輪を持ってきます」

そう言い、婚約者は安心した様子で帰っていった。

「華純の結婚が早まった!」

「式場に連絡しないとね!」

両親は慌ただしくも幸せそうにしている。使用人たちも「お嬢様、おめでとうございます」と笑顔で言う。華純だけが、心の中に悲しみを抱えていた。

(類くんに会いたい)

そう強く思った華純は、部屋に戻ってすぐに類に「今夜来れない?」と連絡したのである。
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