The One


「奈桜」

耳元で低く名前を呼ばれる。
それだけで、胸の奥が一気に熱くなる。

「会いたかった」


先生の掠れた声。
押し殺したみたいなその一言に、涙がこぼれそうになる。


私はぎゅっと先生の服を掴んだ。

「私も…」


声が震える。
それでも、離したくなくて
更に強く抱きつく。

先生の腕が一瞬だけ、更に強くなる。
まるで、離すつもりなんてないみたいに。

「ありがとう」

少しだけ、安堵したような声。

「ううん」


胸に顔を埋めたまま、首を振る。

聞こえる。先生の心音。
自分と同じくらい、速い。
それが嬉しくて、でも少し苦しくて。

「…奈桜」

もう一度、名前を呼ばれる。
さっきよりも、少しだけ優しく。

そっと頭を撫でられる。
その手の温もりに、張り詰めていたものが、一気に解けていく。

「泣かないで」

親指でそっと涙を拭っていく。


「せっかく、会えたんだから」

「…だって」

言いかけて、言葉が止まる。

全部、分かってる。

今日が、最後。

先生の指が、軽く顎に触れて、顔を上げさせる。

そのまま、ゆっくりと距離が縮まって。
触れる直前、ほんの一瞬だけ、止まる。

でも次の瞬間━━━━

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