The One



「ただいま…」


「おかえり、塾送ってくから車乗りなさい」


ママは書類の束をまとめながら、私を見ずに言った。


「…うん」


門限は17時。今どきそんな子居ないって。小学生じゃないんだから。
私の平日放課後は全てスケジュール管理されている。

ママの笑った顔なんて、最後に見たのはいつだろう?

気難しい顔でパソコンとにらめっこしていて、機嫌を損なわないようにと、いつも子供の頃から顔色をうかがっていた。


パパは欲しいものは何だって買ってくれる。でも会社を経営していて、仕事が忙しくてほとんど顔を合わせることはない。どんな時もニコニコ笑っていて、一見優しくていいパパに見えるけれど、本心が分からない。




時々、家に帰りたくなくなる。

私がいてもいなくても、あの家は変わらない。
そんな事を、ふと思ってしまう。


放課後、誰も居なくなった教室で机に顔を伏せて暫くぼーっとしていた。




なんか、脱力。

やる気も起きない…



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