The One


暑い日が続いて、もうすぐ夏休み。
周りの皆は夏休みの予定を立てながら、まだかまだかと楽しみにしている。


私は夏休みなんて、いらない。


「奈桜、元気ない?」

カオリはそんな私の心を見透かしてか、心配そうに首を傾げた。


「そう?ごめんごめん、全然元気だよ」

そう言って、売店で買ってきた麦茶をグッと喉に流した。

「奈桜ってさ、小幡の事好き?」

「ゴホッ」

咳き込んで何も言えない。
え、私ってそんなにバレバレなの?


「ちょっと、大丈夫?」

「うん、ゴホッ…ごめん。急にビックリした」


おかしいな。
顔に神経が集中したかのようにカーッと熱くなる。

「間違ってたらごめん、なんか…そうなのかなって思って」

「いや、ほら…うち女子校だからさ?カッコイイ先生をつい目で追っちゃうんだよね」

誤魔化すように菓子パンを頬張る。


「まぁね、確かにイケメンだもんね!あの歳でもう結婚してるのも納得だわ」

「あの歳?」

そう言えば、先生の年齢なんて考えた事無かった。


「今年28歳らしいよ、若いよねー。いや、うちらからしたらおっさんか」

高校生なんて子供過ぎて、到底相手にされないか…
そう思ってまた胸の奥がキューっと締め付けられた。


「奈桜って意外と年上好きなんだ?」

「だっ、だから違うってば!」

「ムキになるとこが怪しい」


どうこうなりたいわけじゃないの。

分かってる。

幸せになんか、なれない。

叶わない。

分かってるのに…


先生の姿を遠くから見てるだけで、今は毎日が楽しいって思えるの。




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