心の彩はかわらねど
 翌日、十五夜の晩。克地の発案で、お通夜を兼ねたお月見の宴会が開かれました。大月家の庭には、タケの長年の友人二人とその家族が招かれました。
 一人は夫と二人で、もう一人は息子夫婦と、彩葉と同級生だという孫も一緒にやってきました。
「突然の予定でしたが、お越しいただきありがとうございます」
 克地がお礼を言うと、友人二人は寂しい様子で、お悔やみの言葉を贈りました。
 そこへ輝媛がやってきて言いました。
「克地ちゃん、えらい行動力じゃない」
 克地は笑顔で言いました。
「ずっと決めていたんです。タケさんの希望でお葬式は小さく行うので、せめてこういう場は開こうと」
 そのとき、タケの友人の孫がやってきて『お弟子さんは?』と輝媛に尋ねました。彼は歳の離れた三兄弟の末っ子で、輝媛のファンでもありました。
「えぇっとね……」
 輝媛は辺りを見渡しましたが、彩葉の姿はありませんでした。

 人見知りの彩葉は、家の二階の窓から、ひとり空を見上げていました。
 澄み渡る空には、黄金に輝く満月が、堂々と座っていました。
(月って、こんなにもきれいだったんだなぁ)
 お盆のようにまんまるな月に、タケの顔が映りました。
 彩葉が大月家に来てから、おおよそ半年。今日までの日々は、彩葉にとって新鮮で、胸の奥が温まるばかりでした。
(わたしは少しでも変わることができたかな? 輝媛先生の弟子として、一人の人間として、成長することが……できたのかな?)
 そう思えど、彩葉には実感がありません。
(だって、気ままに生きていただけだもん)
『彩葉ちゃーーん!』
 外から、輝媛の声が聞こえましたが、彩葉には届きません。
 ただまっすぐに、月を見つめる彩葉の眼からは、輝く涙が流れました。
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