心の彩はかわらねど
(一か月前も、こんな天気だったな……)
 大月家の二階。彩葉は真っ暗な部屋の窓辺に立ち、タケを悼む雨の夜空を見上げていました。
 ぎゅっと背後から抱きしめられ、彩葉の心に、太陽のように熱い温もりが流れました。抱きしめる輝媛は声を震わせ、大粒の涙をこぼしていました。
 重く気まずい空気に耐えかねて、彩葉は口を開きました。
「すみません」
 しかし輝媛の手の平に、口を塞がれてしまいました。
「ええんじゃ。君が悪いんじゃないけぇ。ただ、そばにおらせて」
 彩葉はしばらく輝媛の腕に身をゆだね、緊張と歓喜が入り混じる胸の高まりを味わいました。
「タケさんは、死んでなどいませんよ。彼女は今、月の都に向かっているのだと思います」
 彩葉が言うと、輝媛は「ああ」と柔らかく笑い、納得したようでした。
「ずっと憧れとったもんなぁ。月見るとよー言ってたんよ『あたしはいつか、月の都に行くって』」
「それに〝宇宙は一体〟でして、タケさんとも、……輝媛先生とも、克地さんとも繋がっています。なので、別れた気もしません」
「克地ちゃんみたいなこと言うなぁ」
「彼の本で知りましたから」
「克地ちゃんは感受性の高さぁ活かして、スピリチュアルの研究しとるけぇ。本なんて読まんでも、本人に聞けばええのに」
「わたしにそんな勇気はないのと、彼のことも推しているので貢ぎのために」
「もしやじゃけど、著作は全部読破したとか――」
「もちろん、お二人の書籍は全部読みました」
 彩葉は振り向き、キラリと親指を立てました。
「おぉ。ありがと、今度いくらか還元したげるな!」
 輝媛の顔には、いつの間にか満面の笑みが浮かんでいました。
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