砂糖菓子のあなたへ
砂糖菓子のあなたへ
記録
6月1日。
夏と梅雨の蒸し暑さを感じながら途方もなく道を歩いていた。最近はおっとうが口うるさく体を動かせとうるさい。だから外に出てやった。だからといって従う訳もなくただ歩いているだけだが。笠くらいは持ってきたら良かったと今更頭を抱えている。とりあえずどこかで涼もうと菓子屋に入った。
「あら、こんにちは〜。ご注文は_?」
菓子屋の夫婦の娘だろう。いうなれば看板娘といったところ。顔が整っていて、目は切長でおっとうが酒を飲んだ時に口走る花魁を連想させるようなそんな娘だった。
「涼みにきただけや。注文せんと出ていけ言うんか?」
我ながら反抗的だと思う。
風鈴がチリンとなったきり音が止まった。
「そんなそんな!是非ゆっくりしていってくださいな〜。」
その余裕さが自身のプライドを傷つけた気もする。眉がピクリと動いた、反射的に。
「…あぁそうさせてもらうわ。」
ふてぶてしい態度のまま店内の木造席にドカりと座った。
「ふふ。お隣失礼しますねぇ。この辺に住んでらして?」
仕返しと言わんばかりに隣にストンと座り、甘い笑顔で聞いた。
「…関係あらへんやろ。他人に教えるつもりもないわ。」
イライラしていた。けど、そのイライラも鎮圧させるほどの甘い笑顔が前にあった。
「そうですか、残念です。歳が近そうなもんで…仲良くなれると思ったのですがねぇ。」
ニコリと笑ったが少し残念そうな色を浮かべていた。そんな顔も絵になる。そう思った。
「…あっそう。…お前さんはここの娘さんやんな。」
ぶっきらぼうだと自分でもわかっていた。でも、目の前の女の子を傷つけてしまうのは本意ではない、と不器用ながらに絞り出した言葉だった。
「…えぇ。ふふ。お手伝いしてるんです。父も母ももう歳ですからねぇ。」
目を細くして笑った。瞳孔に睫毛がかかり、日に反射して美しくも光っていた。
綺麗だと思った。どうしようもなく。
その人しか見えなくなるような。光とともに深海に落ちていく感覚。
あぁ_暖かい。
「ま、えぇやん。」
困惑した。こんな答えを返した自分にも。どうしようもなく美しい彼女にも。目は多分合ってなかったと思う。
「ふふ。ありがとうございます。いつかは店継いでやってけたら嬉しいんですけどねぇ。」
膝に手を置いた。目を瞑り、僅かに笑った。
「……。そ。もう帰る。邪魔したな。明日も来ちゃる。」
不格好に引き戸を開けて出ていった。手も振れず、自身の残り香を残して早々に帰った。今思えば惜しいことをしたと思う。
夏と梅雨の蒸し暑さを感じながら途方もなく道を歩いていた。最近はおっとうが口うるさく体を動かせとうるさい。だから外に出てやった。だからといって従う訳もなくただ歩いているだけだが。笠くらいは持ってきたら良かったと今更頭を抱えている。とりあえずどこかで涼もうと菓子屋に入った。
「あら、こんにちは〜。ご注文は_?」
菓子屋の夫婦の娘だろう。いうなれば看板娘といったところ。顔が整っていて、目は切長でおっとうが酒を飲んだ時に口走る花魁を連想させるようなそんな娘だった。
「涼みにきただけや。注文せんと出ていけ言うんか?」
我ながら反抗的だと思う。
風鈴がチリンとなったきり音が止まった。
「そんなそんな!是非ゆっくりしていってくださいな〜。」
その余裕さが自身のプライドを傷つけた気もする。眉がピクリと動いた、反射的に。
「…あぁそうさせてもらうわ。」
ふてぶてしい態度のまま店内の木造席にドカりと座った。
「ふふ。お隣失礼しますねぇ。この辺に住んでらして?」
仕返しと言わんばかりに隣にストンと座り、甘い笑顔で聞いた。
「…関係あらへんやろ。他人に教えるつもりもないわ。」
イライラしていた。けど、そのイライラも鎮圧させるほどの甘い笑顔が前にあった。
「そうですか、残念です。歳が近そうなもんで…仲良くなれると思ったのですがねぇ。」
ニコリと笑ったが少し残念そうな色を浮かべていた。そんな顔も絵になる。そう思った。
「…あっそう。…お前さんはここの娘さんやんな。」
ぶっきらぼうだと自分でもわかっていた。でも、目の前の女の子を傷つけてしまうのは本意ではない、と不器用ながらに絞り出した言葉だった。
「…えぇ。ふふ。お手伝いしてるんです。父も母ももう歳ですからねぇ。」
目を細くして笑った。瞳孔に睫毛がかかり、日に反射して美しくも光っていた。
綺麗だと思った。どうしようもなく。
その人しか見えなくなるような。光とともに深海に落ちていく感覚。
あぁ_暖かい。
「ま、えぇやん。」
困惑した。こんな答えを返した自分にも。どうしようもなく美しい彼女にも。目は多分合ってなかったと思う。
「ふふ。ありがとうございます。いつかは店継いでやってけたら嬉しいんですけどねぇ。」
膝に手を置いた。目を瞑り、僅かに笑った。
「……。そ。もう帰る。邪魔したな。明日も来ちゃる。」
不格好に引き戸を開けて出ていった。手も振れず、自身の残り香を残して早々に帰った。今思えば惜しいことをしたと思う。
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