無能の花嫁は余命僅かの鬼狩り当主に溺愛される


※※

「……う……っ、予想以上に早いな……」

今宵は満月、満月の夜は特に体中が痛む。

「く……っ、この身体がわずかというのは本当らしいな」

俺は痛みから無意識に握っていた着物の合わせから手を離すと、針を刺すように痛む胸元を姿見に移す。そこには黒いまだら模様が肌に浮かび上がっている。

「首元に鬼紋(きもん)が出るのも時間の問題だな」

鬼紋とはわが神堂家にかけられた古からの呪いの象徴だ。

もう何千年も前の大戦で、初代神堂家当主は鬼の頭である“鬼童子(おにどうじ)”の封印に成功した。
しかし強力な力をもつ鬼童子を永久に封じることは難しく、初代当主がかけた封印は永久的な効力をもつものではなかった。

それに気づいた鬼童子は封印される際、神堂家に呪いをかけた。その呪いは、封印が解ける代に生まれた神堂家の男子は短命であるというもの。

いつか封印が綻び解け、鬼童子が復活する際、もう二度と封印されないように我が一族にかけられた呪い。

俺は生まれてしばらくしてから、この鬼紋に冒されていることを知った。

生前、父が血眼になって國中の薬師に俺を診せたが、どの医者も首を横に振り治療の術はなかった。
父が藁にもすがる思いで、有名な占者に俺の未来を占ってもらったところ、一之宮家の娘が俺の救いになると言われたことから、表向きは政略結婚として妻に娶ることになった。

正直、初めはこの結婚を断ろうと思った。鬼紋に冒され短い寿命である俺に嫁がされる女が気の毒だと思ったのと、愛のない結婚に興味もなかったから。

ただ結納で初めて真白に会ったとき、その考えは変わった。生まれてはじめて欲がでた。
ほんの少しの間でもいい。
彼女を俺の妻にしたかった。

それは結納の際、真白を見た時すぐに気付いたからだ。

彼女は俺の──。
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