無能の花嫁は余命僅かの鬼狩り当主に溺愛される
安堵してそっと腕から手を離せば、男の子の腕に黒いアザのようなものがあるのが見えた。

(何かしら……?)

『生まれつきだ。気持ち悪いだろう』

私はすぐに首を振った。

『気持ち悪くなんてありません。それに誰も、生まれつきそうあろうと望んで生まれたわけではないから……』

確かに体に黒いアザがある人をみたこともなければ聞いたこともなかった。けれど、その黒いアザを持って生まれた彼と能力を持たず“無能モノ”として生まれた自分が重なった。

『それはどういう意味だ?』

『この世にはどうにもならないことがあって、自分ではどうすることもできなくて。でも諦めたくはないんです。私が生まれてきた意味は必ずあるって、信じたい』

『そうか……俺も信じたい』

『え?』

男の子は私に向かって頷くと、腰を下ろし、刀を地面に置いた。そして小指を差し出した

『約束だ。お互い生まれてきた意味があると信じ、命を粗末にしないと』

男の子の真っすぐな力強い瞳に嘘がなくて、いつかきっと自分が生まれた意味が見つかる気がして、気付けば私は彼の小指に自分の小指を重ねていた。

『約束だからな』

『はい』

『それと君は朝までいるんだろう。俺もたまには朝日を見たいと思ってたんだ。一緒に見ないか? 朝日は願いをひとつだけ叶えてくれるらしいぞ』

『そうなのですね……ではぜひ』

男の子は私の返事に満足げにすると、ふっと笑った。その時、胸が少し苦しくなって鼓動がとくんと跳ねた。
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