無能の花嫁は余命僅かの鬼狩り当主に溺愛される
振り返れば、彩芽様が私の髪を握って目を吊り上げている。

「カフェであんたと千隼様を見た時は、腸煮えくり返ったわ! 一体どんな色目使ったのよ!!」

「は、離してください……っ」

「なに? この古書屋に色仕掛けの本でも売ってるってわけ?」

「ち、違います……」

「てかこんな簪アンタに似合わない!」

「やめて!」

簪を取られそうになった私は思い切り彩芽の手を弾いていた。勢いよく払ったからだろう。彩芽様の華奢な白い手の甲には私の爪痕と血が滲んでいる。

「こんの……”無能モノ“!!!」

「真白!!」

声と共に割って入ってきた人物に私は抱き寄せられる。
パンという破裂音が聞こえて見上げれば、目の前には千隼が立っていて、その頬は赤くなっていた。

「どどど、どうして千隼様が“無能モノ”を庇って……」

「いま何て言ったん?」

「本当のことを言っただけですわ。皆、“無能モノ”と……」

「ふざけるな!」

初めて声を荒げる千隼様に驚く。それは彩芽様も同じだったようで、体を震わせると大きな目を見開いている。
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