無能の花嫁は余命僅かの鬼狩り当主に溺愛される
夕日が私を柔らかな温かい光で包む。千隼様は太陽のようなお方だ。凛として強く、私の弱く脆い心を優しく包み込んでくれる。

(私が千隼様にして差し上げられることはなんだろう)

ただそばにいたい、けれどそれだけでは千隼様の呪いは解けない。このままでは千隼様は鬼童子の呪いのよってそのお命を奪われてしまう。

(何か手立てはないのかしら……)

その時私は、目の前のある看板に目が留まった。

「──古書屋?」

私は迷わず店に入った。

店内には本棚が所狭しと並んでおり、古い書物がびっしりと納められている。私は幼いころからほとんど外に出して貰えず、屋敷で過ごすことが多かったため本が友達だった。
読めない文字の古い本は辞書で勉強しながら読んでいたため、今は使われない言葉が使われた本もある程度理解することができる。
背表紙にざっと目を通していき、私は目に留まった“鬼呪辞典”を手に取った。

(鬼の呪いの辞典なら、きっと鬼童子の呪いについても書いてるはず)

(持参金、持ってきておいて良かった)

嫁入りの際に母が残してくれた僅かなお金を持って来ていたのだが古書を買うには十分だ。私は店主にお金を払うと、本を着物の胸元に隠し、店を出た。

その瞬間──何者かに後ろから、ぐいと髪を引っ張られる。
   
「“無能モノ”が調子乗ってんじゃないわよ!」
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