無能の花嫁は余命僅かの鬼狩り当主に溺愛される
「気を悪くしないで欲しいが、仮にこの話が本当であり、また奇跡的に桜天女が現存したとして、俺の鬼紋を浄化できるかどうかはわからない……」

「少し待ってください、天授の力で浄化できる呪いについても補足が端に書いて……」

私は頭をフル回転させてながら文字を目で追っていく。

「……ありました! 特定の鬼の呪いも解呪できる……詳しくは“鬼呪辞典(きじゅじてん)”を参照……」

(鬼呪辞典……! これは!)

「ん? 辞典がいるのか?」

「千隼様これをみてください」

私はすぐに机の横の戸棚から古書屋で買ったばかりの本を取り出した。

「“鬼呪辞典”です」

「驚いたな。一体そんなものどこで?」

「実は千隼様が馬車を呼びに行っている間に、古書屋に寄って買ったんです」

私は“鬼呪辞典”をひろげると鬼童子のページを開く。そこには鬼紋のことが記されており、解呪方法は桜天女の持つ天授の力のみと記載があった。

「……これは……」

「千隼様、探してみませんか? 天授の力を持つ、桜天女様を」

「そうだな、わずかでも希望があるのなら探してみる価値はある」

「はい、では私は早速蔵に行ってほかに参考になりそうな書物がないか探してまいります」

行灯を持って駆けだそうとした私の手を大きな手が掴む。

「もう遅い。今日は寝るぞ」

「え……?」


千隼様は空いた手で私の持っている行灯をするりと取ると、手を繋いだまま寝室へと歩いていく。

(もしかして……初夜?)

夫婦なのだから当たり前といえばそうだが、今夜そんなことになるとは考えてもみなかった。

「あの、その……心の準備が」

「なにを想像してるんだ? 一緒に寝るだけだ」

「……っ」

恥ずかしさから顔が炎が噴き出たように熱い。

千隼様は悪戯っ子のような笑みを浮かべると、繋いでいる手のひらに更に力を込めた。

その夜、満点の星に見守られながら私は初めて千隼様と一つの布団で眠りについた。


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