無能の花嫁は余命僅かの鬼狩り当主に溺愛される
「ここ見てください」

「ん? 桜天女の……天授の力? すまない、前後は俺には読めない」

「あ、読み上げます。我が妻である……桜天女のさくらには、特別な力がある。それはすべての毒や呪いを癒し浄化できる特別な力──すなわち『天授の力』」

「すべての呪いと毒を浄化するだと?」

私は日記帳を人差し指でなぞりながら続きを読む。

「……桜天女の『天授の力』とは、その両の手のひらに宿り、あらゆるものを浄化する奇跡の力……桜天女は幾年の時を経て転生を繰り返し、神堂家の当主に降りかかる厄災の助けとなるだろう……そう書かれております」

私が隣に顔を向けると顎に手を当てた千隼様と目があった。

「手のひらに宿る……天授の力か。興味深いな」

「はい。桜天女様は転生を繰り返すとも書いてあります。この天授の力をもつ桜天女様を探し出せば、鬼紋を解呪できるかもしれません」

「しかし真白、これが書かれたのはもう千年も前の話だ。そもそも本当に桜天女も天授の力も存在したかどうかわからない」

「……」

確かに千隼様の仰ることは最もだ。けれどせっかく得た情報をこのまま見過ごすことなんてできない。それがわずかな可能性だったとしても。
千隼様は小さなため息をひとつ吐くと気遣うように私を見つめた。
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