無能の花嫁は余命僅かの鬼狩り当主に溺愛される
「はぁあ?! やり残したことって何よ!」

「……たった一度でいいんです。千隼様の妻として……お役に立ちたいのです」

妻と言った言葉が気に障ったのかもしれない。彩芽様の美しい顔は夜叉のように恐ろしくなり紅を塗った唇はわなわなと震えだす。

「厚かましいにもほどがあるわ! この無能モノ!!」

「……きゃっ」

ぶたれる──咄嗟にぎゅっと目を瞑って身を屈めた。しかし痛みはやってこない。

「──なにしてる」

(!!)

低くそれでいて凛としたその声色は確かに聞き覚えがあった。
目を開ければ、軍服に身を包んだ千隼様が彩芽様の手首を掴み上げていた。

「千隼、様……?」

(千隼様が……どうしてお屋敷に)

突然現れた千隼様に私同様、彩芽様も大きな目を見開いている。

「あら……ち、千隼様、どうしてこちらに?」

「任務が早めに終わったんだ。真白に用があったため裏口からきたが、一体何をやっているんだ?」

「そ、そそれは、あの」

「真白に何をしようとしてた?」

千隼様は彩芽様の手首にさらにぐっと力を込めると、鋭い視線を向ける。
< 9 / 61 >

この作品をシェア

pagetop