甘すぎる溺愛は、美しい花の隣で。
でも、私はその言葉は……今、その言葉だけは聞きたくなかった。


「それこそ店主が従業員に踏み込みすぎじゃないですか」


今まで誰かと喧嘩したことなんてない。

それくらい平和主義で、平穏が好きな性格。

でも、いつの間にか私は空雅くんの声に負けないくらい大きな声を出していた。





「空雅くんが疲れているのを心配して何が悪いのっ!?!?」





慣れない喧嘩は、私の目に勝手に涙を溜める。

息を荒げて、自分が怒っているのに、何故か泣きそうになるのだ。

「空雅くんが言いたくないことは聞かない! 聞くつもりもない! でも言うべきことは言うし、心配もする! 店主として、絶対に従業員に無理はさせたくないっ!!!」

ほぼ泣いている私を見て、空雅くんは何故か目を細めて、空雅くんまで苦しそうな表情をするのだ。

苦しそうに、でも何かを言いたそうに。

その意味が私には理解出来ない。

「店主なら、店主らしくして下さい」

空雅くんの声は、言葉の通りまさに消え入りそうだった。




「従業員のために、泣かなくて良いです」




あの日……居酒屋で歓迎会をした日。空雅くんは私の頬に触れなかった。
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