甘すぎる溺愛は、美しい花の隣で。
あの日のように、空雅くんの手が私の頬に伸びてくる。

私の身体は、あの日と同じように全く動いてくれない。

あの日と違うことは……空雅くんの手が私の頬に触れそうな場所で止まらなかったこと。

止まらずに、触れたこと。





「ほんと、澪花さんって意味が分からない」





悪口にもとれる言葉を言いながら、その顔はどう見ても悪口を言う顔ではなくて。

私はあの顔を知っている。

店に来たお客さんが美しい花を見つけた時の顔だ。

そんな顔に変わって私の頬に触れた空雅くんの手が、私の頬を(つた)うように優しく撫でていく。

そして、そのまま私の瞳から溢れた涙を指で拭ってくれる。

その時間はわずかなのに、何故か凄く長い時間が過ぎたようにも感じた。

そのまま空雅くんはまた何かを言いかけるように口を開いたのに、そのまま閉じてしまう。

「すみません、少し頭を冷やします」

そう言って、店を出ていく空雅くんの背中を私は見送ることしか出来なかった。
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