夕焼けの空に、君を想う。
第四章

独り

- 木下 桜陽 -
意識を失った時、昔の事を思い出した。
思い出したくないのに。
こういう時だけ、やけにはっきりと蘇る。

僕の家は、冷たくて、静かだった。
広くて、綺麗で、何不自由ないはずなのに。

父さんは大手企業会社の社長で、母さんは父さんの秘書。
仕事が忙しくて、ほとんど家にいなかった。
それが、普通だった。
僕の名前、桜陽は母さんがつけた名前なのだと、母さんが教えてくれた。
桜の様に美しく、誰かを照らして導いていける、太陽の様な存在になってほしい…と。

…馬鹿だな。
僕は美しくもないし、肝心の太陽にも触れられない。
誰かを照らす、なんて…持っての他。

僕の病が判明したのは、生後三ヶ月の頃。
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