響け!涙のペザンテ
「リズ。すまない。悲しいことを思い出させてしまったかな」

『いえ。大丈夫です。お気になさらないでください』

リズは笑みを浮かべる。しかし、まだその顔から憂いは消えていない。レオンハルトの胸がズキンと痛みを発した。

(仲のいい家族がいなくなったら、何年経っても悲しいものだ。悲しい……?)

レオンハルトの頭にアルベルトの寝室が浮かぶ。あの部屋にはあるものがなかった。レオンハルトの頭の中のパズルが完成しつつある。

「みんな、話を聞いてくれてありがとう。もう一度アルベルト様の寝室を観察してみるよ」

レオンハルトはそう言い、手鏡の前から離れた。そのままゲストルームを飛び出し、レオンハルトはアルベルトの寝室へと向かった。

レオンハルトは扉を開け、真っ先に棚へと駆け寄った。棚には多くの写真が飾られている。レオンハルトの記憶よりも若いアルベルト、そして彼の妻のミアとの結婚式の写真。まだ赤子であるヴィルヘルムたちを抱っこしているアルベルトの写真。入学式、卒業式、家族旅行。どの写真にも笑顔がある。
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