妹に全てを奪われた伯爵令嬢は遠い国で愛を知る
「リュオンと言えば男性名だろう」
「そうなのね。私は外国の出身だから知らなかった」
「とてもそうとは思えないくらい流暢なロドリー語を話すようになったな。訛りもないし、現地人より綺麗な発音だ」

「ふふ、ありがとう。リュオンと会ったとき、言葉が通じなくて歯がゆい思いをしたからね。国に帰った後で猛勉強したのよ。元気そうで良かったわ。ずっと心配してたのよ。妹が怪我を治しても動こうとしないから、何か重い病気なんじゃないかと――」

「ああ、それなんだけど。あのときおれはただ腹が減って動けなかっただけなんだよ」

 彼は氷の浮かんだ果実水を飲みながら、あっさりと私が知らなかった八年前の真実を暴露した。

「…………私は勘違いで余計なことをしてしまったのね」

 あのときリュオンが必要としていたのは治療ではなく栄養たっぷりの食事だったのか。

 怪我人や病人ではなく、お腹を空かせている子どもを連れ込まれて、診療所の医師もさぞかし困惑したことだろう。

「いや、助かったよ。セラがあのときおれを診療所に連れて行ってくれたから、エンドリーネ伯爵に仕える縁ができたんだ」

「そうなの?」
 温かいオムレツを食べながら、私は銀色の目をぱちくりさせた。

「ああ。診療所にいた医師は偶然にもエンドリーネ伯爵の友人でな。おれの目を見て魔女だと知り、伯爵に紹介してくれたんだ。おれは伯爵の支援を受けて魔法学園に通わせてもらった。貧しい孤児だったおれがいまこうして裕福な生活を送れているのはセラのおかげだ。ありがとう。感謝してる」

「そんな、私は大したことはしてないわよ」
 慌てて手を振ると、リュオンは笑んだ。
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