妹に全てを奪われた伯爵令嬢は遠い国で愛を知る
 妹は昔から私のものを欲しがった。
 お気に入りの人形、ペンダント、髪飾り、リボン、靴。

 私が泣いて訴えても両親は聞く耳を持ってくれず、それどころか「お前は姉なのだから妹には優しくしろ、寛容になれ」と私を叱る始末だった。

 調子に乗った妹が私を虐げ、侍女扱いしようとも見て見ぬふり。

 十三歳で妹が《国守りの魔女》となってからは、家の内外での私の立場はより一層惨めなものとなった。

 妹の強烈なアプローチに負けたクロード王子から婚約者を妹に変更する旨を言い渡されたときも、頷く以外の選択肢は与えられなかった。

「おめでとうございます!」
「王子様、イノーラ様、お幸せにー!」

 風に舞う花びら。歓声と口笛。笑顔で手を振る二人。

 本来クロード王子の隣にいるべきは私だったはずなのに。
 たとえ魔法が使えずとも、クロード王子のために立派な淑女になれるよう努力してきたのに――全ては無駄だった。

「まさかこんなことになるなんてねえ。セレスティアも可哀想に……」
 鳴りやまない祝福の拍手の中。

 沿道の脇、高台に設けられた王侯貴族用の観覧席の一つに座っている私の耳に、ひそやかな囁き声が届いた。

 台詞の内容だけを見れば私に同情しているようだけれど、その声音には隠しきれない嘲りがある。

 自分に不利益をもたらさない他人の不幸とは実に甘露なものなのだ。
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