妹に全てを奪われた伯爵令嬢は遠い国で愛を知る
 肩を落とし、人でごった返した市場を歩く。

 道の左右には露店商人たちが列を作り、威勢のいい呼び込みの声があちらこちらから上がっている。

 商品は瑞々しい野菜や果物、焼き菓子や乾物、果実水など、多種多様だ。

 視覚よりも嗅覚が強く食欲を刺激する。
 甘い焼き菓子や香辛料の香り、特に焼かれる肉の香りは堪らない。

 じゅうじゅうと煙を上げる屋台の串焼きを見て、お腹の虫が鳴る。

 追い出されるにしても、せめて昼食を食べた後にしてほしかった。
 今日は朝が早かったから、お腹が減って仕方ない。

 気づかないうちに私は屋台の前で足を止めていた。

 通行人の邪魔にならないよう、屋台のすぐ近くに寄り、無言で喉を鳴らす。
 食べたい。猛烈に食べたい。
 涎が零れてしまいそう。

 でも、ただでさえ少ないお金を無駄遣いするわけにはいかない。
 困窮している庶民が厚切りの豚肉なんて贅沢すぎる。

 駄目よセラ、冷静になるの……。
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