妹に全てを奪われた伯爵令嬢は遠い国で愛を知る
「じいさん、串焼き一つ」
「あいよ。一本百デリルだ」
 頭の中で食欲と理性が壮絶な戦いを繰り広げている一方、ちょうど通りがかった中年男性が無愛想な初老の商人から串焼きを買った。

「やっぱりログじいさんの串焼きは最高だなァ……塩加減が絶妙で……」
 目尻を下げ、頬を緩ませ、中年男性はぶつぶつ呟いている。

 その言葉が嘘ではない証拠に、彼は口の周りを肉汁で汚しながら豪快に串焼きを平らげていった。

 店先で美味しそうに串焼きを食べる彼の姿はこれ以上ない宣伝になったらしく、俺も、私も、と次々に客が押し寄せる。

 店の周囲で串焼きを頬張る客たちの幸せそうな表情といったら。

「………………」
 もはや辛抱堪らず、私は財布を鞄から取り出し、所持金を確認した。

 ――百デリルならギリギリ足りる!

「私も一本ください!」
 私はほとんど全財産である硬貨を握り締め、差し出した。

「あいよ」
 初老の商人はお金を受け取り、串焼きを私に渡した。
 湯気を立てる串焼きを見下ろして、ごくりと唾を飲み込む。

 次はいつ食事にありつけるかわからない。心して食べよう。
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