初夜を拒む皇女は敵国の皇太子に溺愛される
差し出された手を、見つめる。

触れてしまえば、きっと何かが変わる。

分かっているからこそ、私はゆっくりと首を振った。

「……守りたいだなんて」

声が、わずかに震える。

それでも、止めない。

「そんな言葉、信じません」

彼の手に、触れないように。

一歩、距離を取る。

胸の奥が苦しい。

けれど――引いてはいけない。

「私は……屈しません」

はっきりと言い切る。

その瞬間、心が少しだけ軋んだ。

本当は、分かっている。

彼が嘘をついていないことくらい。

それでも、信じてしまえば終わりだ。

だから私は、視線を逸らさずに立ち続ける。

――これ以上、近づかせないために。
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