初夜を拒む皇女は敵国の皇太子に溺愛される
夜気の中で、彼の言葉はひどく現実的だった。

「我々の国に、協力する貴族がいます」

静かに告げられた一言に、思わず息を呑む。

「話は、すでに通っています」

「……なんですって?」

思わず問い返すと、セリオスは迷いなく続けた。

「皆、我らの国で着々と話を進めています」

その声音には、確かな確信があった。

「資金も、兵も――準備は整いつつあります」

信じられないはずなのに。

その言葉は、あまりにも具体的で。

ただの希望ではないと分かってしまう。

胸が、強くざわついた。

まだ終わっていない。

あの国は、完全には消えていないのだと。

セリオスは一歩、踏み出す。

「……あなたを女王に迎える準備が整っています」

低く、力強い声。

逃げ場のない現実が、目の前に差し出される。

私は、言葉を失ったまま、その場に立ち尽くしていた。
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