兄とあたし
 中学をどうするかで、母と義父が話し合っていた。
 「このまま、公立に行かせると、また、いじめられるんじゃないかと思って…。」
「私立か?」
「うん…。」
「どこ受けさすつもりなん?」
「女子校かな…。」
「だったら、Y校にしよう。」
「Y校?」
「うん。
Y校なら、電車通になるけど、気分的にはいいんじゃないか?」
「分かった。」
 そんな話し合いが行われてるのも知らず、あたしは公立の中学校に行くつもりだった。
 入試当日。
 試験は国語と数学の筆記と面接。
 あたしの出来ることはした。
 結果は、不合格…。
 公立の中学に行ったら、幼稚園の時に一緒だった、Eちゃんと同じクラスで、更に、Eちゃんの後ろの席だった。
 驚いたのが、Eちゃんは、幼稚園の頃、こっちから話しかけないと話さない子だったのに、中学ではめっちゃ話す子になっていたこと。
 Eちゃん自身も、幼稚園の時は、おとなしかった。と言っても、同じ小学校の子達は、信じていなくて、あたしに本当かどうかを聞きに来たくらいだった。
 1年の6月に、弁論大会というのがあって、あたしは小学校の時のいじめについて書いた。
 これが、先生やクラスのみんなに好評で、クラス代表になり、学年代表になった。
 学校代表にまで選ばれたけど、担任が国語の先生ということもあり、夏休みが潰れると言われ、断念した。
 1年の10月に、学習発表会があり、あたし達のクラスは、劇をすることになった。
 当時、人気コミックでいじめの物語があったので、それにするか、あたしの弁論を題材にするかと2択与えられた。
 あたしとしては、コミックの方をしたかったけど、担任の独断で、あたしの弁論を題材にされることになった。
 毎日練習三昧で、あたしは主役をすることとなって、毎日が忙しかった。
 いざ、本番の日、緊張しながらも、劇は大成功に終わった。
 1年の11月に、中学で出来た友達Aちゃんと、家出をすることにした。
 家出と言っても、普通の家出じゃなくて、自殺出来るとこを探しに行った。
 自殺する場所に行く前に、同じクラスのK君に会った。
 「こんな時間に何してんの?」
「何でもない。」
「家に帰らないの?」
「あの家は、弟だけいればいいから…。」
「そうなん?」
「うん。
じゃあね。」
 そう言って、また、自殺する場所を探し求めていた。
 11月…。
 夜になると寒くて、自転車で家出したけど、薄着だったから、余計に寒かった…。
 当時、テレクラも流行っていたので、テレクラに電話して、ホテルに行ってくれる人を探して、その人達とホテルに行った。
 朝早くに、自転車の場所まで送ってもらい、こっちに土地勘がないから、土地勘のある方に行こうと、元来た道を帰り、公園で休んでるとこを義父達に見つかった…。
 「(あー…、殺されるっっ!!)」
 これしか頭になかった…。
 あたしの家に連れ戻され、友達のAちゃんと別々に話しを聞かれた…。
 正直に話したところ、義父に殺されることを覚悟した。
 学校からは、下校時刻に来なさい。と言われた。
 学校からの帰りにも、家に着いてからも、殺されることはなかった。
 次の日、学校に行くと、小学校の時にボス的存在だったTちゃんに会った。
 「昨日、怒られなかったでしょ?」
 Tちゃんは、何かを知ってるかのように、話しかけてきた。
 「怒られなかったけど…。」
「それね、あたしのママが怒ったからよ。」
「えっ?」
「えりのお父さん、見つけたらぶっ殺す!!って言ったの。」
「(やっぱり、通常運転…。)」
「で、ママが、ぶっ殺すですって?!
そんなんだから、えりちゃんが出て行ったんじゃないんですか?!
まずは、無事を祈ることでしょ?!
本当に殺されてたら、どうするんですか?!
喜ぶんですか?!
それでも、親ですか?!って、ブチ切れて…。」
「そうだったんだ…。
ありがとう。
(あの義父なら、大喜びだったと思う。)」
「なんか、お金持ちで、幸せそうに見えたけど、実際は違ったんだね…。
なんかあったら、相談しに来て。
いつでも待ってるから。」
「ありがとう。」
 1年の技術は、木の折りたたみ椅子を作ることだった。
 機械を見ただけで、やる気は失せた。
 ので、T君に全部作ってもらった。
 完成したものを眺めていると、AちゃんとB君が話してて、あたし達の家出が学年中にバレた…。
 バレても、周りは驚かず、どちらかというと、あ、やっぱり?と言った感じだった。
 2年になり、また、Eちゃんと同じクラスになった。
 でも、Eちゃんは、中々、登校してこなくて、寂しい気持ちになっていた。
 そんなある日、同じクラスのHちゃんと昼休みに、話していたら、Tさんが、あたしとHちゃんのとこに怒鳴り込んできた。
 理由は、Tさんの悪口を言っていたと…。
 そんなことに、勿論、身に覚えがなく…、Hちゃんは胸ぐらを掴まれていた。
 あたしもHちゃんと同じ理由で来られたはずなんだけど、あたしは蚊帳の外…。
 仲良くなったM君が、えりさんもよな?と言われ、そうなんだけど、そんなこと言った覚えなくて…。と話していた。
 なんとか、先生2人がかりで、Tさんを離し授業が始まった。
 あたしの隣は、F君で机から何か出そうとしていたけど、無視していた。
 放課後、Sちゃんと帰ろうとしていたら、Yちゃんに呼び止められた。
 Yちゃんの奥には、女子の不良が何人かいた。
 Yちゃんの話しによれば、あたし達が、Eちゃんの悪口を言っていると…。
 これも、身に覚えがない…。
 Yちゃんに事情を話すと、どうやら、Tちゃん自身が広めた話を、あたしとSちゃんが広めたことになっていると…。
 そんな事実ないし、TちゃんからEちゃんの悪口を聞いた。と答えた。
 それから、お昼のこともYちゃんに話した。
 もしかして、Tさんではなく、Mとして聞いてないかと。
 そしたら、案の定で、あたしは、TさんのことMちゃんとも、Mとも呼んだことが無い。と答えた。
 聞き間違えたのは、F君で後で言っとく。と約束してくれた。
 Tさんからは、即座に謝ってもらった。
 Yちゃんから事情を聞き、Tさんは怒ってTちゃんを探しに行った。
 まぁ、不良漫画によくある、体育館体育館裏に来い!ってやつ。
 3年になって、また、Eちゃんと一緒のクラスになった。
 これで、3年間一緒。
 3年だからと言うことで、色んな行事に本気参加の女子に比べて、何のやる気もない男子…。
 そのことが、ハッキリしたのは、合唱コンクール。
 女子は本気だったから、毎日練習していたのに対し、すぐに帰る男子…。
 当時、低い声の出そうと思えば出せる、あたしとHちゃんが、もしもの時のために、男子パートを覚えた。
 本番、女子は、綺麗で力強い声で歌ってる一方。男子の声が途切れた。
 すかさず、あたしとHちゃんが、お互い示し合わせたわけでもなく、男子パートを歌い出した。
 男子は驚いて、あたし達の方を見ながら、自分のパートを歌い始めた。
 他のクラスは、男子女子共に最後まで歌っていたのに対し、あたし達は途中で男子が歌えなくなるハプニング付き…。
 賞も貰えないと思っていたら、あたしとHちゃんの歌が評価されたらしく、金賞を貰った。
 クラスの全員から感謝された、あたしとHちゃん。
 高校の進学を考えた時、先生からは、どこも受かりません。と言われてしまった…。
 確かに、悪いこともいっぱいした。
 でも、いいこともしたはず…。
 それに、名前書くだけで行けるとこあるとこもあった。
 それなのに、どこも受かりません、って…。と思っていた。
 母は、どこも受からないと聞いて、即座に塾に入れた。
 その塾がすごいところで、私立の中学生ばかりの塾。
 公立なんて、あたしくらい…。
 更に、授業がない日も、授業終わってからも、23時までなら居ていいよ。システム。
 家にいたくない、あたしにとって、神的な塾。
 塾に入ってから、毎日、学校終わったら塾行ってた。
 10月の文化祭では、美術の先生が担任ということもあり、地球ができるまでを画用紙と絵の具で表現し展示した。
 これが、保護者、先生方、色んな人から高評価をもらった。
 受験まで、まだまだある夜に、担任が家に来た。
 受けれるとこが大幅に上がったったこと、有名私立の合格も夢じゃなく、そこの特進に行ける可能性があることを母と義父に言いに来たのだ。
 特進は、土曜も学校があり、しかも6時間あると言われ、お断りした。
 担任に言われてから、すぐに、有名私立のS校以外は、授業料出さん!と言われてしまった…。
 いくら、急激に学力上がったと言えど、底辺だったの分かってる?と思った。
 入試当日。
 朝ご飯にうどんが出てきた…。
 何故、うどん…?と思っていたら、母が、うどんは記憶力にいいから。と言い出し、うどんを食べて試験会場へ…。
 試験会場では、先生が来てくれていて、受験番号とお守りをくれた。
 教室に入り、準備をしていると、鉛筆が出てきた。
 それは、母の2番目の妹の夫、叔父が太宰府まで行って買ってきてくれたものだった。
 縁起がいいので、その鉛筆を使うことにした。
 受験の問題はスラスラ解けて、見直す時間があるほど時間が余った。
 英語と国語は、問題なく上出来。
 数学は、ギリギリと言ったとこかな?
 それくらいの出来だった。
 面接も上手くいき、合格発表を迎えた。
 合否は担任から1人ずつ呼ばれて、報告されるものだった。
 あたしの番になり、教室に入ると、専願だったこともあるが合格。と言われた。
 あたしは大喜びで、家に帰り祖母に報告。
 弟もその場にいたので、祝福してくれた。
 卒業式の時、色んな先生からいわれたのが…。
 「いい方にも悪い方にも、名前が売れたのはお前だけだ。」
 だった。
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