兄とあたし
 小学校に上がり、入学式の日、義父と母は、揃って出席…。
 校門をくぐって、案内所に行くと、6年生のお姉さんが2人、名札とお花を付けてくれた。
 そこで、義父と母と別れ、義父と母は、体育館行った。
 あたしは、緊張しながら、お姉さん2人に教室に連れてってもらった。
 お姉さん達は、優しくて、色んな話しをしてくれ、緊張を和ませてくれた。
 入場の時も、お姉さんが片方ずつの手を握ってくれて、スムーズに会場に入れた。
 式は長かったけど、何とか終わりまで持ち堪えた。
 教室に入ると、沢山の教科書と、入学のしおりと、時間割など、色んな大切なものが置かれていた。
 先生から、それらの説明を聞くと、帰りの時間になった。
 宿題は、時間割をして来ることだった。
 学校から帰って、すぐに時間割を済ませた。
 次の日、学校に行くと、お姉さん達が来てくれた。
 「この学校には、朝、遊具一周ていうのがあるの。
外に出て、遊具一周しよう。」
 外に出てみると、全校生徒が、遊具一周をしていた。
 遊具一周とは、運動場にある遊具を遊びながら、一周することだった。
 遊具一周が終わると、月曜日は朝礼があって、そのまま運動場にいて朝礼をするけど、それ以外の日は、教室に帰って、朝の会まで、お姉さん達とおしゃべりしていた。
 友達と喧嘩して、運動場で泣いていると、学年の大きいお兄さん達が、慰めてくれ、教室に戻って、友達と仲直りさせてくれた。
 放課後は、算数の補習があった。
 どうしても、算数だけ苦手で、毎日補修させられた。
 そして、あたしの最終手段、形で覚える!をやってみた。
 そうしたら、なんとかクリア出来ていた。
 小学校の図書館は、幼稚園の図書館より、かなり広く、あたしは、目標を決めた。
 1年間で100冊読む!
 これを機に、図書館通い始めた。
 そして、目標達成させた。
 小学校生活は、楽しくて喜んで毎日通っていた。
 それが崩れたのが、小学校4年の時…。
 全授業が、体育になった。
 学級崩壊したのだ。
 学級崩壊させたのは、学年で1番の乱暴者のM君。
 運動場が空いていれば、運動場で体育をして、運動場が空いてなかったら、体育館で体育…。
 塾組との差は広がるばかり…。
 テストは、持ち帰って宿題として提出…。
 勿論、こんなことをされて、黙ってる保護者ばかりじゃない。
 何回も保護者が学校に対して、抗議していた。
 それでも変わらず。体育ばかりの授業…。
 おかげで、算数の公式は壊滅状態…。
 5年になっても、それは変わらなかった…。
 更に、あたしは、5年の中頃から、いじめられるようになった。
 理由は、女の子のボス的存在のTちゃんより、髪が長かったのと、Tちゃんにいじめられてた子を庇ったから。
 初めは、女子だけだったのが、面白いというのと、運動神経の良さで恨まれて、男子からもいじめられることになった。
 いじめ方は、あたしをバイキン扱いして、あたしの声が聞こえると、耳が腐る!と言って、スプレー缶を持っているかのような手で、プシューと声に出しながら、耳を洗浄したかのように、落ち着いたり、あたしが触れば、腐った!と耳の時と同じような態度を取られた。
 あたしは、バイキンなら、触らないでいよう!と思い、掃除してなかったら、サボり!と言って怒られた。
 いじめにあってるから、学校行きたくない!と言っても、流石、世間体第一の家族…。
 毎日、無理矢理連れて行かされてた…。
 学校にも家にも居場所なんてなかった…。
 当時、いじめ問題が大々的に報道されていて、自殺する人も多かった。
 母と叔母は、バカなことして…。と蔑んだりしていたが、あたしにとっては、英雄だった。
 自殺は痛いのが消えるまで、苦しむから、死ぬ勇気も根性もない、あたしからすると、偉大な人と思っていた。
 無理矢理、学校行かす為に、祖母は何度もあたしの心臓に包丁を当ててきて、あんたを殺して、あたしも死ぬ!と言うばかり…。
 学校に行くまで、新聞紙に包丁を巻いて、後ろから学校までついて来るのは当たり前になっていた。
 毎日が地獄だった…。
 ある日、母の妹が、親より先に死んだ子はどうなると思う?と聞いてきた。
 あたしは、知らない。と答えた。
 「親より先に死んだら、三途の川の近くで、石をずっと積み上げるの。
 でも、積み上がりそうになったら、鬼が来てそれを倒すの。
 親が迎えに来るまで、それが続くのよ。」
 と言われた。
 「(石を積み上げる?)
(そっちの方が天国じゃん。)」
 そう思うくらい、心はズタボロだった。
 それでも、毎日、無理矢理学校に行かされた…。
 「(あぁ、この人達は、ホントに死んで欲しいんだ…。)
(そうだよね…。)
(弟しか要らないんだもん…。)」
 教室に入ってもいじめられるだけ…。
 家にいようとすると、無理矢理学校に行かされる…。
 逃げ場がなかった…。
 6年になると、先生が変わって、普通の授業をするようになった。
 当然、Mくんは癇癪を起こした。
 それでも、先生は揺るがず、授業が進められた。
 6年生になってもいじめは、終わらなかった。
 ある日、椅子に座ったら、グニュっという感触があった。
 なんだろうと思い、席を立つと、椅子に大量の水のりが塗られていた。
 「大丈夫?」
 なんて声をかけてきても、声をかけてきた人達が犯人な訳で、ニヤニヤとしていた。
 あたしは、保健室に行き、制服を着替えた。
 教室に戻ると、水のりはそのままで、ポケットティッシュで拭き取った。
 更に気付いたのが、クラスの他にもいじめてる人がいることがわかった。
 ここまでくると、死にたい気持ちが毎日あった。
 あたし達の学年の校舎の横に、100年記念として石のオブジェがあったので、そこに頭をぶつければ死ねるけど、誰もいじめで起きた事件として何も思わないだろうし、みんなの前で飛び降りるとしたら、ベランダからになるけど、木が植えていったので、死ぬことはないだろう…。
 そんなことばかり考えていた。
 そんな時、母の3番目の妹(唯一、車の免許を持ってる。)が、車に乗って!と言い祖母とあたしを何処かに連れて行こうとしていた。
 祖母もどこに行くか分かっていたみたいだった。
 そして、辿り着いたのは、ふれあいセンター…。
 「(なんでこんなとこに?)」そう思いながら、中に入った。
 あたしの名前が呼ばれ、あたしは驚いた。
 誰にも、名前を名乗ってなかったから。
 祖母と叔母に連れられて、中に入ると、優しそうなおばちゃんが居た。
 あたしの家族と親戚は、病院に行くと、症状を本人に言わせるんじゃなくて、付き添い人が全てを話し、本人には話させないのが普通だった。
 だから、今回もそうだろうと思って、話す気なんてなかった。
 案の定、何があったのか、先生が聞くと、祖母と叔母が、あたしの言葉を遮って、話し始めた。
 あたしは、話すのを止めようとしたら、先生が言った。
 「えりちゃんのことが、心配なのは分かります。
でも、私は、えりちゃんと話したいんです。
おばあ様も叔母様も、ここから出て待ってください。
えりちゃんの言葉で聞きたいですから。」
 そう言って、祖母と叔母を待合室に行かせた。
 それから、あたしの目を見て、優しく言った。
 「何があったか言える?」
 あたしは、頷いた。
 「学校でいじめられてる…。
おばあちゃん達が、無理矢理に学校に行かせる…。
死にたい…。」
 一言一言、ゆっくりと話した。
 「そっか…。
ツラかったね…。
よく、1人で頑張ったね…。」
 その言葉だけで、大泣きした。
 「おばあちゃん達に、どうして欲しい?」
「無理矢理、学校に行かせないで欲しい…。」
「分かった。
そうするように言うね。
学校の先生にも、えりちゃんの気持ちを話して、無理に学校行かせないようにするね。」
 あたしは、声が出ないほどに泣きじゃくって、大きく頷いた。
 「えりちゃん、ツラいこと話してくれて、ありがとう。
これから、おばあちゃん達と話すから、待合室で待っててくれる?」
 あたしは、頷いた。
 祖母と叔母が、中に入り、先生と長く話していた。
 それが終わると、車に乗って、家に帰った。
 あたしは、明日が怖かった…。
 無理矢理、連れて行かれるんじゃないかと思って、夜もあまり寝れず、朝になっても、弟は起こされても、あたしは起こされず、学校行きなさい!も言われず、朝食を食べた。
 朝食を食べても、警戒していた。
 そんな時に、学校行かないなら、家のことを手伝いなさい!と大叔母に言われた。
 家のこと…。
 キッチンには、狭いから入らせてもらえないし…。
 あたしは、祖母の手伝えるだけ手伝った。
 学校からの解放と、誰からも学校に行け!と言われない解放で、徐々に、心を取り戻しつつあった。
 ある日、義父に言った。
 「最近、梨狩り行かないね。」
「誰のせいだと思ってんだ?!
おめぇのせいだろうが!!
弟に謝れ!!」
 衝撃的な答えだった…。
 あたしの心は、また闇に戻った。
 その夜、母と義父が話し合いをしていた。
 「校長先生から言われたんだけど…。」
 母の職業は、ずっと変わらず、小学校の教諭。
 義父の職業は、工場勤務。
 「校長が何?」
「学校行ってなくても、外出はさせた方がいいんだって…。」
「は?
恥晒しなのにか?!」
「恥晒しって…。」
「実際そうだろうが!
タダでここに住まわせて、タダで飯も食わせてやってるのに、この上お出かけ?!
冗談じゃない!!」
 それを聞いて、母は黙り込み、あたしは悲しくて泣いた。
 学校に行かなくなって、数週間が経った。
 夕方、チャイムが鳴った。
 その時には、あたししか居なくて、仕方なしに出ることに…。
 玄関には、女の子のボス的TちゃんとTちゃんの腰巻のNちゃんが居た。
 「なに?
今更。」
 あたしは冷たく接した。
 「今日の帰りの会で、先生が泣きながら、えりちゃんのこと話してて、えりちゃんがどんな気持ちだったかとか話してくれて、泣いてる人も何人かいて、申し訳なく思って…。
こんなんじゃ、お詫びにならないかもしれないけど、受け取って。」
 渡されたのはケーキ…。
 あたしのこと、全然知らないんだな…。
 実は、ケーキ大嫌い。
 一応受け取って、家族に渡した。
 次の日、学校行かなきゃと言う気持ちと、行ったらいじめられると言う気持ちで、どうしていいか分からず、母親に連れられて、久しぶりに登校した。
 それでも、上靴に中々履き替えれなくて、走行してたら、クラスのみんなが降りてきた。
 みんな、もう大丈夫だから!と言って、教室に連れてってくれた。
 その日から、いじめは本当になくなった。
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