脳内猫化しているわたし、地理勉強中あなたと旅して恋に落ちた
どこにもいない?!
船に戻るとそこには子猫と…母猫?!良かったね。しかし、牛乳は持っててもしょうがないから猫たちにあげることにした。

お皿がないので、わたしは牛乳を手の中に注いでそうやって猫たちにあげた。

猫たちが小さなピンク色の舌をだして美味しそうに飲み干した。

それで何回も何回も牛乳を手に注いだ。

そうしているうちにわたしも飲んでみたくなり舌を出した瞬間…

「ダメ!汚いだろう?!病気になっちゃうよ?!」

ふん!飲みたかったのに!!

あ!そうだ!これはチャンスだ!

「え〜、わたしのことは好きすぎて病気になんかなったら心配で心配で気が気でなくなるってことか〜にゃ〜?」

できるだけいじわるっぽく言った。しかし、わたしは恋愛といえば小学生のころ恋愛小説を1冊2冊くらい読んだ程度だ。

「ち、ちがうよ!普通に汚いだけだよ!ほら、もう牛乳なくなったんだろう?早く手洗え!」

わたしはほっぺたを膨らませた。それでも、このまま手はベタベタするし、川で洗うことにした。

もっと良い作戦考えなきゃね。ゆうまくんはどんな女性がタイプなんだろうね。

そう考えながら渡り板を渡って船へ入ろうとしたら…船が突然揺れてバランスを崩して海へ落っこちそう!!

キャッ!!!

目を閉じた。しかし…いつになってもバシャッって音がしない。肌も服も濡れている気がしない。わたしは頭を打って気絶したのかな?これは夢の中なのかな?

恐る恐る目を開けるとコーヒーのようなつぶらな瞳がわたしを見返した。

ゆうまくんはわたしをウェストから捕まえて船へと引き上げた。そして、わたしを抱いていた。 

「大丈夫、苺花?」

よ、呼び捨て?!

「だ、だ、大丈夫!おかげさまで!あ、ありがとう!」

ゆうまくんを落とすつもりのわたしだが、逆にゆうまくんにメロメロさせられる。
 
ゆうまくんはビクッとした。

「あ、ごめんごめん!近いね!!」

「じゃ、あ、そうだ!これからイギリスね戻ろうね!」

ポチッ

船はゆっくりと動き出した。川岸を振り返るとそこにはだんだん小さくなる二匹の黒いかげ。最後に見えたのはあの2つの黒い尻尾が森の方へと消えるところ。

鳥肌がたってきた。あんな温かいところから出たからかな。わたしはぎゅっとコートを自分に巻き付けた。

イギリスにつくと雨が降っていた。傘はどこにもなかったからゆうまくんと一緒に自分のコートを一つの大きな帽子みたいに被ってあの土の道をロンドンへと歩き続けた。正直、このままだとちょっと歩きづらいからよちよち歩いていた。まるで、イギリスの雨のなかで2羽のペンギンが歩いていたみたい。

ゆうまくんの息が私のほっぺたを撫でた。温かい。ずーっとこのままでいいと思った。

しかし、そのわけにもいかなかった。

ウェストミンスター寺院についても葉介さんと芽依ちゃんらしき人物はどこにも見つからなかった。雨宿りしているのかなと思って中にも入ってみたけどやはりいなかった。

「まだ見学は終わっていないのかな?」

「そうかもな。」

ウェストミンスター寺院の入口のアーチでゆうまくんと一緒に座って待つことにした。

ザーザー

特に話すことは思いつかなかった。いや、それは嘘だ。本当はゆうまくんのタイプを聞きたかった。でも、なかなか聞く勇気が出せなくて言葉が喉の奥に詰まってどう頑張っても引き出せなかった。

「す、すごい雨ね。」

「うん。」

頑張ってわたし!!

「あ、あの!」

「何?」

わたしは下を向いた。やはり、聞けない。

「ゆうまくんは猫が好き?」

「まあ、普通かな。」

がっ!!できない!!誰か助けて!!

そのまま沈黙の中で何十分も過ぎていた。

しとしとしと

わたしはだんだんウトウトし始めた。

雨はもうほぼあがっていた。

「やはり可笑しいよ!俺探してくる!」

わたしは眠かったけどここで1人でいて、もし、ゆうまくんも帰ってこなかったら大変だと思いゆうまくんと一緒に探しに出かけることにした。

「でも…どこさがせばいいの?」

葉介さんと芽依ちゃんを想像してみた。2人ならどこに行きそうなのかな…遊園地?買い物?

「この近くに芽依ちゃんが好きそうな遊園地あるの?」

「遊園地はないけど大きな観覧車ならあるよ!ロンドン・アイと呼ばれているよ。」

それでゆうまくんを追いかけて猛スピードでそこへと走っていった。

「店員さんにあの2人を見たか聞けられたら良かったけど、えいー」

わたしは慌てて口をふさいだ。ゆうまくんにあんなこと言ったら悲しくなるに決まっているから。

あまりにも大きな観覧車だから回るのにすごーい時間かかる。しかも、なが〜い行列ができている。

それでも、一生懸命集中してその人混みの中から仲間を探し出そうとした。

「見つけた?」

ゆうまくんは頭を振った。

「このまま探していてもしょうがない。」

ゆうまくんの顔がみるみるこもっていた。

でも、本当にそうだね。ロンドンはでかい。一ヶ月かけて探しても見つけられないかもしれない。

念のためにウェストミンスター寺院にもう一度戻ってみても…やはり葉介さんと芽依ちゃんはどこにもいない。

しょんぼりしながらウェストミンスター橋を渡っていたら、途中で足を止めて夕焼けを眺めた。空は夕焼けで黒い雲でいっぱい。川の水は真っ黒だけどあっちこっち赤やオレンジでキラキラと光っている。美しいんだね。それでも、心はそんなうっとり眺めるような気分じゃない。

ドキッ!

待って!わたしは閃いたかも!!

「これはすべてVRゲームでしょう?」

ゆうまくんは変な顔してこっちを見た。

「う、うん。」

「しゃ、このままじゃずーっとゲームの中に閉じ込められてしまう!でも、ゲームだからこそ葉介さんと芽依ちゃんを見つけなくてもいいんだ!スタンプを全部集めるとゲームクリアになってみんなをVRのなかから救出できる!!」

ゆうまくんの顔に虹がかかった。まるでそんなような表情だ。

「よし!!頑張るぞ!!」

その夜は船で眠ることにした。わたしのコートを毛布にして、ゆうまくんと一緒に添い寝した。ゆうまくんの腕は枕代わりに使った。

なかなかいい枕だ。

船に揺られて、川のせせらぎを子守唄と聞きながら、ゆっくり深い眠りへとおちていた。
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