脳内猫化しているわたし、地理勉強中あなたと旅して恋に落ちた
にゃーにゃー
「猫だ!どうしたの?お母さんぬこどこだ?」

わたしは左を見た。母らしき猫がいない。

わたしは右を見た。母らしき猫がいない。

わたしは後ろを見た。母らしき猫がいない。

にゃーにゃーにゃー!!!  

「そうだ!!」

わたしは四つん這いになってコミュニケーションを試みた。

「にゃ?にゃお〜ん!にゃ!にゃ!」

子猫も、ゆうまくんも、わたしはまるで不審者とでも思っているような顔で私を見つめた。ゆうまくんは少し後ずさりした。

「もう!!子猫は何言ってるかわかんない!」

やはりダメだ。猫耳になれるための訓練はまだ足りていないのか。

「そりゃ、そうだろう。」

ゆうまくんは呆れた。

「あ!そうだ!きっとお腹を空かしてるんだろう!ミルクを買ってあげましょうよ!」

わたしだってお腹はいつも空いている。子猫もきっとそうだ!

「一体どこで買うつもり?」

あ…

「きっとこの辺にスーパーがあるんじゃない?この子このままほっておけないでしょう?なにかしなくちゃ!」

ゆうまくんは一旦黙り込んだ。そして、無口のまま、わたしと一緒にミルクを売ってるところを探し始めた。

色々な店を見回って、やっとあれっぽいのを見つけた。中には食べ物ぎっしりの棚がいっぱい並んでいて、あっちこっちに果物や野菜が詰め込まれた緑色の四角いカゴがならべられている。

ゆうまくんと手分けして、やっと冷蔵庫の並んでる壁を見つけた。冷蔵庫のドアを開けると、冷たっ!!牛乳の瓶を取り出した。

それでレジに並んだ。

そして、店員さんが外国語で何か言ってきたけど…何言ってるか全くわからない!!

「ゆうまくん英語できるでしょう?店員さんと話して!」

ゆうまくんはビクッとした。それから口を開けた。

「は、ハロー」

その後口から出たのは…聞いたこともないほどカタコトな英語!!わたしは思わずクスクスと笑い出した。

そして、ゆうまくんの顔は見たことないほど怖いものになった。まるで閻魔様そのものみたいな顔だ。

「何がそんなに面白いんだ?!お前が英語できる天才ならお前が買え!!!」

そう言ってゆうまくんが勢いよく買ったばかりの牛乳をわたしの顔へ投げつけて店の外へと逃げた。

痛っ!

「ゆ、ゆうまくん待ってて!!まっててば!!」

それで、レジの上にスタンプが現れたことに気づいた。

でも、あまりスタンプしてるほど暇じゃない!

ぺたっ

キラキラキラキラキラキラ

『ヨーロッパ連合と共通農業政策』

わたしはナレーションがまだ始まらないうちにゆうまくんのあとを追いかけて走り出した。

「ヨーロッパ連合(EU)とは、ヨーロッパの国どうしがチームを組んで協力しあっている国際機関のことです。」

わたしは森へと続く土の道を駆け抜け始めた。

「第二次大戦後に、石炭や鉄などをめぐる戦争が起こってふたたび戦争にならないようにヨーロッパ石炭鉄鋼共同体を作りました。数十年後、このヨーロッパ石炭鉄鋼共同体がほかの似た国際機関と合体し、ヨーロッパ共同体(EC)と呼ばれるようになりました。そして、平成時代にECがヨーロッパ連合(EU)と違う名前になった。元服したみたいな感じ。」

ぴょん!!倒れた木の上を跳んだ。ゆうまくんは私より足が遅いからだんだんゆうまくんとの距離が縮まっていく。

「ヨーロッパの国はみんなこのヨーロッパ連合を通じて支え合ってる。例えば、お互いの作った食材に関税という他国からのものを国に持ち込むときに払うお金を払わせない。」

森を抜けると浜辺が見えてきた!木の後ろに隠れてゆうまくんを観察した。

「さらに、食材ごとに値段を決めて、その食材をあまり作らない国はより高い価格で買うことになります。これでみんなは国内でその食材を作ろうと頑張るようになります。

EUの共通通貨のユーロはヨーロッパの国の多くで使われています。しかし、まだ自分だけの通貨を使う国もあります。」

ゆうまくんはあっちこっち見て周りを確認してから海の近くに座り込んだ。

波の音と小鳥のさえずり声が聞こえてくる。

わたしはゆっくり呼吸を整えた。

どうしてゆうまくんはあんなに怒ったのだろう。確かに、他人のミスを笑うのはあまり良くないけど…

っていうか、ゆうまくんは英語ができると言っていた!なのに、なぜあんなにふざけて幼稚園児でも分かるほどカタコトな英語を喋っていたのだろう。

それはわからない。でも…海をただただ寂しそうに見つめるゆうまくんを見るとわたしはとんでもないことをしたのはわかった。

わたしはゆっくりゆうまくんへ近づけてとなりに座った。砂は温かい。

「あの…笑っちゃってごめんなさい。」

ゆうまくんは私の顔も見ないで話し始めた。

「いや、誰だって笑うんだろう。こんなバカな俺を。

俺、2年前イギリスに引っ越した時、あまりにも英語出来なくて2年下のクラスに入れられたさ。体の大きい小6なのに、小4のちびっこたちと一緒に過ごしてて恥ずかしかった。親父はね、そうすれば俺のんびりと適応できてそうするよう学校に希望したんだ。

で、何ヶ月経っても英語全くできない俺。それでもうぜんぶ嫌になっちゃって家出した。

で、結局捕まえれたんだ。

それからは日本人学校に転校したけど、今度は日本の学習の遅れもあるといって、留年することに。」

ゆうまくんが石を拾って海へと投げた。パシャっと。

「両親は英語ができて現地校で友達いっぱいキラキラしてる妹ばかり可愛がるんだ。

両親なんて俺が死んでもいいと思ってる。いや、たぶん英語もまともにできないグローバル人材になんか慣れないバカな俺なんか死んでほしいと思ってる。俺は生きてて恥だ。」

わたしの胸がぎゅっと締め付けられた。でも、何を言えばいいかわからなかった。うん…

「そう…でも、日本人が英語できないのは当たり前。できるとカッコいいのはできて当たり前じゃないから!ゆうまくんだって、ほかにもカッコいいところがいっぱいある。そんなカッコいいゆうまくんはわたしが生きててほしい!」

わたしながら結構な名言。

ゆうまくんはだんだんニコニコしてきた。笑顔のゆうまくんは始めてみた。

「そうだね。ありがとう。」

と思ったらゆうまくんは素早く顔をそらした。

「船へ帰ろう。あの子待ってるんだろう。」

声は厳しいけど…わたしの心の中のどこかで何かが変化した気がした。元気なゆうまくんをもっと見たい。ゆうまくんを応援したい!ゆうまと一緒にいたい。

誰だって応援したい。彩花ちゃんもそうだった。でも、ゆうまくんは何かちょっと違う。応援したいだけじゃなくて、一緒にいたい。ゆうまくんから好かれたい。

いや、ゆうまくんを惚れさせたい!ゆうまくんの花嫁になりたい!白いウェディングドレスをきて、赤いバラでブーケトスしたい。それから、三毛猫を3匹買って、ゆうまくんの実家に住んで、お義母さんとなかよくゆうまくんのために料理を作ったりして、その料理が美味しいと毎日言われて幸せに暮らしたい!

もぉぉ!!新作戦だ!ゆうまくんを必ず惚れさせてみせます!!必ず!
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