脳内猫化しているわたし、地理勉強中あなたと旅して恋に落ちた
レンガの街
船の中の空気は重かった。やはり、みんなは大変緊張している。そりゃ、しつこいな警察官に追いかけられながらどこかにあるかわからないスタンプを探し出すのは大変だからね。

いきなり船が止まった。

ぼんやり考えていたから気がつかなかっただけでもうフランスの街の川の岸辺だ。

外を見渡すとここは田舎じゃなくて大きな街のド真ん中。頭の上には大きな橋がかかっており、通行人で賑やかなんだ。

船から橋の上に登った。

空は灰色。周りはどこをみてもレンガ造りの建物ばかり。

「フランスだからパリに行くかと思ったけど違うみたいだね。」

「じゃ…ぶらぶら歩こうっか。」

そう言って私たち3人は手を繋いであのフランスの街をあっちこっち歩き始めた。

どこを見ても同じようなレンガから作られている建物ばかり。

街の中の道路には大きな白い車がたくさん走っている。

パン屋さんのであろうレンガの建物の中からふんわりと焼き立てのパンとチョコの香りがただよってくるぅぅ!!

わたしは鼻をクンクンさせた。でも、我慢せねば!お金はこれから必要になるかもしれないし!

カバンの中からパンを取り出し、歩きながらそれを食べ始めた。

「大事そうな建物はどこかにいるのかな?」

「わかんない。すべての建物は見た目が全く同じじゃん!わかるはずがない。」

しかも、私たちはフランス語も英語も読めない。つまり、どんな建物かわかる方法はたったひとつ、窓から覗き込む。

美味しそうな焼き立てパンをケースいっぱいに入れているパン屋さん

おしゃれなワンピースやアクセサリーをたくさん売ってる店

前に子どもがケンケンパを遊んでいるマンション

うん…どれも違うな。

「このままじゃヤバいんじゃない?」

「そうだね、お巡りさんがすぐ来るだろうからね。とりあえずどこかの建物に入るしかない。」

このスタンプラリーは最初は楽勝だった。しかし、やはり時間が経つにつれてスタンプが目の前に突然現れることが少なくなり、逆に何か特別なことをやらねば現れぬ…そんな難しいゲームになった。まるで、レベルアップして新しいステージへ行ったみたいだね。

すると可愛い犬と猫がたくさん遊んでいた建物を見つけた。

チリンチリン

そこに入ると店員さんが顔を上げて、外国語で何か言ってきた。

周りを見渡すと…カフェみたいだね。

「ここ、おそらく猫カフェみたいなところかな?」

「そうみたい!!」

わたしと芽依ちゃんは目を輝かせた。

「猫ちゃんたちかわいい!!!」

わたしは咳払いしてそれから真剣な顔に戻った。

「やはりここにいないだろう。次のところへ行こう。」

「やだ!!」

「さあさあ、行きましょう行きましょう。」

芽依ちゃんの気持ちはよくわかった。しかし、ゆうまくんのことを考えるとさっそく出ていくことにした。

ゆうまくんは英語ができないのがコンプレックスだ。イタリアのスーパーでの出来事を振り返った。

今のゆうまくんはその時よりも何倍も明るい。しかし、芽依ちゃんの前で英語話しててなんか頼んだら、ゆうまくんは大恥をかくだろうね。そしたら、また暗い気持ちになる可能性は高い。

ゆうまくんはいつもわたしのことを守ってくれる。だから、今回、わたしは静かにゆうまくんのことを守ることにした。

再び町に出てまたぶらぶらし始めた。

「あそこは教会じゃない?次はそこに行こうかな。イギリスに行った時も教会にスタンプ台あった。」

あ!確かに!今までのスタンプをどこに見つけたか、その傾向を確認しとけばよかった!!

わたしが今までそれを思いつかなかったことを悔しく思った。

でも、そんな名案を思いついてくれる仲間が近くにいるのは嬉しい。すごく嬉しい。

今までのたびはたった1人だったら大変寂しかったんだろう。でも、みんなと一緒だからここまで来られた。わたしはそうだと思う。

教会への階段を上り始めたその時!

ピーピーピー

聞いたことある音!教会の中には警察官が?!

みんなは急いで振り返り階段を駆け下りていた。

ピーピーピー!!!

警察官たちがこちらに気づいた全力で走ってくるぅぅ!!

私たちは道路へと走り出した。

チリンチリン

自転車が突然目の前に飛び出してきて危うく転ぶところだった!

自転車に乗っているサラリーマンが外国語で何か叫んで追いかけてくる警察官を見るなりわたしの腕を捕まろうとしてきた!!

わたしは捕まえられそうになったけどギリギリですり抜けて街の細いところへと走っていった。ゆうまくんと芽依ちゃんは私のあとをつく。

その道路においてあった大きなゴミ箱にぶつけて転んじゃった。ゴミ箱の中身が空中に舞い上がり地面へと散らばってゆく。私の頭の上にバナナのかわが落ちた。

ぺたっ

それでもお構いなくすばやく立ち上がりその細い道を抜けていった。

すると角を曲がろうとした瞬間、5人家族にぶつかった。

「ごめんなさい!!!」

頭をペコペコ下りながらも走り続けた。

ピーピーピー

私の息はだんだん荒くなってきた。

やがて、道が2つに分かれているところへ来た。

右も左も狭い道路。

わたしは一瞬迷った。

あ〜!!!わたしは右利きだから右!!!

ゆうまくんと芽依ちゃんはもう私に追いついた。警察官もそこまで遠くない。

右の道路を全力で走っていた。走って走ってもっと走った。

行き止まりだ!!!

私の顔は真っ青になった。

わたしは必死に頭の中をフル起動ぐるぐるさせた。

どこにも行くとこいない!

いや!上に行くしかない!

わたしは芽依ちゃんをおんぶして、建物の壁を登り始めた。体育が得意で良かった!

ゆうまくんはだいぶ苦労しているみたいけど、あとをついてきている。

「よいしょっと!」

もう屋根の上に立っていた。

ピーピーピー

警察官もこっちに気づいたみたいで登ろうとしてくるぅぅ!!

もう迷う暇は何もない!ここで捕まえられたら永遠にスタンプラリーが終わらせなくて永遠にここの牢屋に閉じ込められることになるだろう。

私はつばを飲んだ。

重いカバンを屋根の上においた。

そして、全力で走っていて思い切りジャンプした。

私の足は地球から離れていき、数メートル下には車いっぱいの硬いコンクリート道路だ。

私の胸はドキッとした。

ここで落ちたら本当に終わりだ。

ガタン

「あわあわあわ!!」

わたしは次のレンガの建物ギリギリで着地できた。

ゆうまくんの方は綺麗に着地できた。

勇気を出して続くしかない!

私たちは何回も何回も屋根から屋根へと飛び移った。

何回も何回も落ちて死んじゃうと思った。

さすがに警察官たちは追いかけてこなかった。

そりゃね、大変危険だから。

数十分それをやり、警察官はもう来ないだろうと思って下へ降りれるようなところを探した。

ちょうどいいパイプを見つけて、それを滑り台のように使って滑って無事に高い屋根の上から降りることに成功した。

正直、すごく怖かった。

汗も大量にかいた。あれはもうすごい運動だった。そして、お腹はペコペコ。

クンクン

なんか美味しそうなパンの匂いがする。

それを辿っていくと…目の前には小さなカフェだ。

「カバンは捨てたからな…もうとくに昼を過ぎているし食べようっか?」

「賛成!!」

わたしたち3人はカフェの中へ入った。

あ!!やべっ!!ゆうまくんは?!注文させられない!

わたしはそう心配したけど、店の中には店員は人もいなかった。そう、全ては自動的だった。

画面をタッチして美味しそうなサンドイッチを3つと牛乳3つを買った。

これでもうお金はないんだ。1ユーロもない。

でも、それでもいいんじゃない?もうフランスにいるし、最後のスタンプだって見つけたら即出られるし…

もし、そのスタンプが見つからなかったとしても、ノルウェーにもどって愛莉さんたちにご飯を頼めばいい。いや、うしさんの世話のお手伝いをしたらご飯を買うためのお金をくれるかもしれないね。

私たちは昼ご飯をのんびり食べてうとうとし始めたそのころ…

ピーピーピー

ドキッ

「しつこいな!!」

また警察がくるぅぅ!!

まだヘトヘトで回復しきれていない私たちは無理に体を起こして店の裏口から外へと出た。

「もう2度と屋根に上りたくないからな!」

わたしは道路をどんどん走っていた。

「警察は、ハアハア、見失ったら、ハアハア、隠れる場所、ハアハア、見つけ、ハア、よ。」

流石な私でも疲れ果てている。

芽依ちゃんは地面に倒れ込んだ。もう走れない。

ゆうまくんは芽依を抱っこして、また走り出した。

隠れる場所、隠れる場所、隠れる場所…

ピーピーピー

ゆうまくんはパン屋から出ているお客さんにぶつかってパンが空に舞い上がった。

ごめんなさいをいう余裕もなく、お構いなく走り続けた。

大きな公園をかけぬけるとボール遊びをしている子どものボールがわたしの体に当たった。

痛っ!!!!!

それでもボロボロになりながらも、わたしは走り続けた。

警察官は私たちを見失ったと思って隣のマンションに隠れようとしたら…

ガチャガチャガチャ
 ガチャガチャガチャ
  ガチャガチャガチャ
ガチャガチャガチャ

やべ!!!鍵がかかってる。わたしは焦った。

ピーピーピー

走り続けるしかない!!

町の広場にでて花壇の周りのフェンスを越えようとしたら服が引っかかった!!

がっ!!

わたしは焦って思い切り服を引っ張ったら…

ビリビリ

あ!破けで穴が空いた!!

仕方ない!!

わたしはまた走り続けた。

警察官の笛の音はもうかなり遠い。

ここからまた道は右と左に分かれている。

でも、前回から学んで今回は大きな道路の方へと走っていた。

そこで大きなレンガの建物の大きな入り口の中に飛び込んで、

ガチャッ

と鍵をしめた。よし、これならしばらく大丈夫だろう。

汗だらけでべとべとヘトヘトな私たちは息を整えながら窓から外の景色を眺めた。

夕焼けだ。空の上にふわふわ黄色い雲がのんびりとぷかぷか浮かんでいる。

街全体はピンク色に輝いている。美しい。
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