敏腕記者の怪我は溺愛の始まり~そんな昇格結構です
1.雪の夢
佐山雪はその記事を眺めながら頬杖をついていた。
「佐山さん」
「え?」
「何を見てるんですか?」
二つ下の海江田が、眼鏡を持ち上げながら雪のパソコンをのぞきこんだ。
「うん、チーフの受賞記事」
「ああ、『財閥の明日』ですか?」
「うん」
この記事は雪が取材など高原を手伝って出来た記事だ。
資料集めから始めるとほぼ一年くらいはかかった。
今後の高原の代名詞になる記事だ。
「経済界の予言者だって言われてますよね。そういえば、チーフの受賞って何度目ですか?」
「えーと、今回の賞は多分三回目?部長室のサイドボードにトロフィーが二本あるからね」
海江田は声を落として言った。
「高原チーフってどうして未だに課長職なんですか?」
「チーフ自身があんまり地位とか名誉に興味なさそうなんだよね」
「噂だと昇格拒んでるらしいですよね」
昇格を拒んでる?やっぱりそうだったのか。怖くて聞けなかった。
あんなに賞を獲っているのに、ただのチームリーダーなんておかしいと思っていた。