敏腕記者の怪我は溺愛の始まり~そんな昇格結構です
「わかりました。どんな表なんですか?」

「二社の決算と予算の前年比率を入れた俺の作っている表だ」

「難しそうですね。今度見せてください」

「見せてもわからないかもな。簿記苦手だろう」

「うー、今度こそ頑張ります」

 資格試験にこの間落ちた。勉強時間が足りなかったのは言い訳だ。

「ま、色々頑張れよ」

「はい。ところで先ほどの役員のお話はなんだったんですか?」

 勢いに乗じて聞いたつもりが、チーフの顔色を見て失敗したと思った。

 これ以上聞くなという意味の無言だと即座に理解した。プライベートのことだろうか?

 高原チーフには鬼門があった。昔から恋愛のことなど彼に聞くととたんに不機嫌になる。

 実は恋愛のことを聞くのは基本的に他の人もタブーだ。

 驚くほど身近で恋愛関係が多々破局している。

 それにはこの仕事が深く関係している。

 例えばずっと取材したい相手から日時を指定されたら、もはやこちらに選択肢はない。

 何が何でもその時に取材へ行く。その日その時間にたとえ自分の用事があったとしてもだ。

< 32 / 121 >

この作品をシェア

pagetop