敏腕記者の怪我は溺愛の始まり~そんな昇格結構です
 雪でさえあの程度の忙しさで別れるのだから、高原が結婚をしない理由は明白だ。

 しかし、最近は上のほうで働き方改革が進み、休日はなるべく呼び出さないよう通達が出ている。

 特に若手はそういうことに敏感なので、高原は林や海江田には最近休日出勤を申し渡したことはない。

「成長したな、佐山」

「え?」

 休みなくもぐもぐと食べていたら言われた。

「追求してこないじゃないか」

「チーフが無駄話をしないのはよく知っています。敢えて話さないのは私が聞く必要ないからです」

「あはは……お前、案外いい部下だな」

「今頃知ったんですか?遅すぎますよ」

「はは……はあ……」

 高原は笑い出した。雪は箸を止めて、彼の顔を見た。

 疲れているのはよくわかる。でもこの様子はただごとじゃない。

 見たことのない顔色と沈黙。少し心配だった。

「そういえば佐山はあれから交際相手はいないのか?」

 雪は彼と別れた時、チーフに報告していた。

 入社当時、彼の誕生日だけはどうしたって仕事を入れないでほしいと頼んだからだ。

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