洗濯物をぶつけたら皇太子の溺愛が始まりました

第1章 風に舞う出会い

朝の冷たい空気が、指先に染みる。

桶の水に手を入れた瞬間、私は小さく息を呑んだ。

「……冷たい」

けれど、そんなことを気にしていられる身分ではない。

すぐに布を掴み、石に打ちつける。

ぱしゃり、と水が跳ねた。

「これも、皇太子様のものかな」

洗い上げたばかりの白いシャツ。

上質な布地は、触れるだけで分かる。

この宮廷で働いていれば、嫌でも知ることになる。

それが誰のものか。

「……ルークレイン様」

その名を、声に出さずに呟く。

その時だった。

ふと、視線の先に人影が映る。

回廊を歩く、一人の男性。

整った姿勢。無駄のない歩み。

そして、目を引くほどの存在感。

「あ……」
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