うたい、かなでる

序章

 いつもは昼休み中に図書館に行くのに、今日は委員会の集まりで行き逃してしまった。

 仕方がないからと放課後の図書館に立ち寄ったものの、閉館まで時間があると思うと、ついつい一時間ほど長居してしまった。

 それに合わせて帰る時間もいつもより、一時間ほど遅くなる。

 基本的に早く帰りたいから、この時間ですら久しぶりだ。

 図書館で借りたい本の手続きをして、荷物をまとめる。

 そして正門に向かう。

 私の家から学校までは、二つ行き方がある。

 どっちも徒歩だけど、時間と道の複雑さが変わる。

 朝はゆとりをもって家を出るから、時間はかかるけど道が単純な方で。

 帰りはさっさと帰りたいから、ちょっと複雑な道のりの最短ルートで帰る。

 例に漏れず、今日も最短ルートだ。

 正門を出て、少し歩いたところで角を折れる。

 ここら辺は駅が近いせいで、人が多い。

 正直あまり得意ではないけど、帰りも一人だし、変に時間がかかるのも嫌だ。

 だから、人をできる限り無視して歩いている。

 駅を過ぎて少しすれば住宅街に入り、穏やかな空気が流れ始める。

 そこまでの辛抱だから、それなりに頑張れる。


 穏やかな空気が流れる住宅街に、ひっそりと音が潜んでいる気がした。

 生活音ではなく、よく知っている音。

 久しぶりに聞いた音。

 気づけば引き寄せられていた。

 目の前は真っ白で、何も見えなくて。

 ただただ、静かな、でも確かな音に夢中で耳を澄ませていた。
< 1 / 2 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop