うたい、かなでる

1章

部活は入っていない。使える時間はギター研究に使いたいから。

自分で言うのもなんだが、そこそこ人気者だと思う。

顔も悪くはないし、運動は割と得意で基本的に何でもこなせる。

勉強も人よりしているせいか、学校では上から数える方が早い部類の人間である。

人付き合いも苦手ではない。

だからだと思ってるが、放課後とか休日は遊びに誘われることも多い。

だが、ほぼ断っている。

部活の理由と同様、ギター研究のためだ。

もうずっと断り続けているのに、未だに誘い続けてくれている。

めちゃめちゃいい人達と出会えたなと思っていたりもしたが、最近発覚したのは、「断られなければ運がいい」という一種の運試しゲームへと昇華されていたのだ。

ちょっとそれはどうなんだと思ったりもしたが、原因はあまりにも誘いを断る僕にあるのだから、甘んじて受け入れている。

なんか遊ばれてるのはしゃくだけど、やっぱり誘いを断っても一緒に居続けてくれる人達がいるのは幸せだと思う。

まあ、そう思ってはいるけど、やっぱりギター研究のために、学校が終われば即帰宅する。

ありがたいことに、チャイム厳守の学校のため、ソッコウ帰ることが可能だ。

チャイムと同時に席を立ち、友達と帰りの挨拶を交わしながら教室を出てく。

もちろん、徒歩ではなく自転車だ。

理由は単純明快。

早く帰るため。

今日も今日とて、人気のないところを爆速でこいで移動したりしながら家に着いた。

鍵をあけて、誰もいないリビングに向かって、

「ただいまー」

と叫ぶ。

洗面台で手を洗ったら、そのまま二階の自分の部屋に向かう。

荷物をおろしてブレザーだけハンガーにかける。

机の横のギターに手を伸ばして、椅子に座る。

一弦ずつ音をならしてチューニングしていく。

最高の音楽を奏でるために、ここは丁寧に。

チューニングが終われば、今度は軽く一、二曲弾いて指を慣らす。

そしたら、『あの曲』を弾き始める。

僕がギターを弾く理由。



夢中になって弾いていたら、さっきまで水色だったはずの空は、オレンジ色になっていた。

カーテンで遮りきれなかった光が僕の顔をオレンジ色に染める。

時計を見ると、16:30を、とっくに過ぎていた。

もう一度窓の方に視線を向けると、風が吹き抜けたかのようにカーテンが踊った。

ん?窓閉め忘れてるくない?

その時に換気のために開けていた窓を閉め忘れていたことに気づいた。

ギターを弾くときは閉めるようにしているのに、久しぶりにやってしまった。

慌ててギターを置いて窓の前に立つ。

窓を閉めようと思ってカーテンを開け、何気なく視線を落とした。

するとそこには、家の前でこちらを見て立ち尽くす女の子がいた。

目が合っているのに、合っていない気がした。

僕は引き寄せられるように、玄関へ向かっていた。
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